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労災(過労死)

大切な人の大切な命。労災の申請を忘れていませんか?
~遺された想いをカタチに~

例えば、下記のケースを考えてみましょう。

あなたのお兄さんは、朝7時から深夜2時まで仕事をする生活を送っていました。健康だけが取り柄だと話す兄でしたが、休みの日も会社に出かけ、家に帰ってくるなり、「疲れた。会社に行くのが億劫だ。」とこぼすことが増えました。会社では業務が多忙を極め、ノルマも厳しいため、食事をとる暇もないと口にしていました。そんな中ある日、兄は会社で心臓発作を起こし、帰らぬ人になりました。悲しみに暮れ、喪失感がいっぱいです。

この場合、働かせすぎによる責任を会社に追及できるのでしょうか?

あなたのお兄さんは、土日祝日も関係なく、朝から晩まで働いており、明らかに「過労」といえますので、労災保険制度(労災)の適用が認められる可能性があります。労災が認められれば、一定の保険給付がもらえます。保険給付があれば、遺されたあなたのご家族は、経済面においては救われますので、亡くなられたお兄さんの想いもほんの一部ではありますが、慰めることができると思われます。

今回のように、業務過多の中で亡くなられたご家族がいらっしゃるようでしたら、亡くなられた方のためにも労災の申請をまず考えるべきです。

1.労災保険制度とは

医師

労災保険制度とは、業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害または死亡等について保険給付を行う制度です。労災制度がなくとも、業務上の事由が原因で亡くなった場合には、会社には労働者を安全な職場環境で勤務させる義務(安全配慮義務)があるので、それを怠ったことを理由に損害賠償請求をすることが可能です。

しかし、このような損害賠償請求において、請求が認められるためには、労働災害を受けた労働者・ご遺族の側が、会社側の個別の安全配慮義務違反を特定し、会社側の過失と損害との因果関係等を立証しなければなりません。この立証には、多くの費用や労力が必要であり、その被害を短い期間で回復させることは非常に困難であるのが実情です。

そこで、企業で働く方々が安心して働けるように労災制度が設けられ、(1)労働者が負傷・死亡等したこと、(2)それが業務上のものであること、の2点さえ立証できれば保険給付が行われ、労働災害を受けた方は経済面で救われることになりました。

今回の場合、お兄さんが亡くなられたことは明らかですので、(1)の要件は満たします。しかし、あなたのお兄さんのように、いわゆる「過労死」が疑われる場合においては、(2)の要件、つまり、亡くなったことの原因が業務にあるかどうかが争点となります。

2.今回のトラブル解決方法

あなたのお兄さんの死に対して、会社の業務が原因だというためには、その死と業務との間に、「相当因果関係」が認められる必要があります。相当因果関係とは、「Aという行為の結果としてBが生ずる」という条件関係を前提として、その結果に対して補償等を行うことが相当であると判断するための法律上の概念です。

今回のケースでは、あなたのお兄さんはずっと健康であったのですから、会社から命じられた過度な業務がなければ死亡しなかったと考えられます。そのため、条件関係は認められるでしょう(もちろん、お兄さんが健康診断などでの問題はなく、亡くなるまで健康であったことが前提です)。

では、業務と、死亡という結果との間に、労災補償を行う必要があるという相当性は認められるでしょうか。それが認められるためには、あなたのお兄さんの業務が、心臓発作を引き起こすほどに、身体を著しく悪化させるほど過重なものと認められるかが問題となります。

あなたのお兄さんの労働は、量的な面で著しく過重であり、質的にも、土日祝日もなく、早朝から出社するなど、不規則で過酷な仕事です。また、会社が課したノルマも厳しく、精神的な面でも大きな負担がかかっていたといえます。

このうち、長時間労働をしていたことは客観的に測ることができます。長時間労働は、睡眠時間の短さにもつながる問題であり、疲労の蓄積という観点からも重要視されるため、主要な立証事項となります。

こうした事情を考慮すると、業務と、あなたのお兄さんの死亡という結果との間には、労災補償を認める必要があるという相当性が認められる関係にあるといえます。今回のケースでは、お兄さんの死は会社の業務が原因と認められるでしょうが、一般的にはその立証は困難であることが多いため、法律と交渉の専門家である弁護士に相談するのがよいでしょう。

3.労災申請でお悩みでしたら、弁護士に相談を!

もし、労災申請についてお困りの方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。誰かに相談するだけでも気持ちが軽くなりますし、労災申請が認められれば、受けた被害が完全に回復するわけではなくとも、多少の救いにはなると思われます。

労災申請が認められることは、残されたご家族にとっても、大切な方を失った悲しみから立ち直り、新しいスタートを切るきっかけになるのではないでしょうか。会社と争うことを恐れて、泣き寝入りしてしまう必要はありません。亡くなられた方も、何よりもまずご家族の幸せを望んでいるはずです。

弁護士  正木 裕美  [愛知県弁護士会]

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