監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 青山学院大学法学部,専修大学法科大学院
弁護士の仕事は,法的紛争を解決に導くことだけでなく,依頼者の方の不安や悩みを解消することにもあると考えています。些細なことでも不安や悩みをお持ちであれば,気軽に弁護士に相談していただけたらと思います。依頼者の方にご満足いただけるリーガル・サービスを提供していけるよう全力で取り組んでいく所存です。
残業代請求コラム
公開日:
あなたは、有給休暇をきちんと使えていますか?
「仕事が忙しすぎて有給が使えない…」、「理由を言わないと有給を上司に了承してもらえない」など、自由に有給休暇を使えずに、不満を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
有給休暇は、心身をリフレッシュし、健康的に働くための労働者の当然の権利です。このコラムでは、法律的な観点から、有給休暇の基本のルールを解説します。コラムを読めば、「忙しすぎて有給を使えないときはどうしたらいいの?」、「有給取得を拒否する会社は違法じゃないの?」という疑問も解消されますので、ぜひ最後までご覧ください。
労働者の権利である有給休暇ですが、あなたは有給休暇に関する正しい知識を持っているでしょうか。まずは、有給休暇を使ううえで知っておきたい基礎知識を解説いたします。
労働基準法において、会社は、以下の2つの要件を満たす場合、原則として10日の有給休暇を与えなければならないことになっています。
このルールは、フルタイムで働く従業員に限らず、パート従業員やアルバイト従業員であっても同様に適用されます。もっとも、パート従業員やアルバイト従業員など労働日が少ない労働者については、適用条件などが変わってきますので、以下でご説明いたします。
フルタイム従業員と、パート従業員・アルバイト従業員など労働日が少ない方については適用条件と付与日数が異なります。付与される有給休暇の具体的な日数は、以下のとおりです。
フルタイム従業員
雇入日からの勤続日数 | 付与される年次有給休暇の日数 |
---|---|
6ヵ月 | 10日 |
1年6ヵ月 | 11日 |
2年6ヵ月 | 12日 |
3年6ヵ月 | 14日 |
4年6ヵ月 | 16日 |
5年6ヵ月 | 18日 |
6年6ヵ月以上 | 20日 |
パート・アルバイト従業員
週の所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 (週以外の期間によって、労働日数を定めている場合) |
雇入日からの勤続日数に応じた 年次有給休暇の日数 |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヵ月 | 1年 6ヵ月 |
2年 6ヵ月 |
3年 6ヵ月 |
4年 6ヵ月 |
5年 6ヵ月 |
6年 6ヵ月以上 |
||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 | 3日 |
付与された有給休暇は、2年で消滅時効にかかります。有給休暇の権利は消滅時効までの2年間行使できるため、付与されてから翌年までは繰り越すことができるということになります。2年以上経過してしまうと、有給休暇は時効により消滅してしまいます。
なお、2020年に労働基準法の改正がありましたが、消滅時効は2年のまま変わっていません。
有給休暇の買取は原則として禁止されています。なぜなら、有給休暇の制度は、労働者の心身をリフレッシュし、健康的に働けるようにすることを目的としており、会社が労働者の有給休暇を買い取ってしまうと、その目的を果たせないからです。
もっとも、「有効期限と繰り越し」で解説したとおり、有給休暇は時効で消滅してしまいます。そのため、時効で消滅する有給休暇を買い取るケースなど、労働者の心身のリフレッシュを図るという制度の趣旨に反しなければ、買取が許容される場合もあります。
ただし、このような場合も、会社には買取の義務はありません。そのため、時効までに使い切れなかった有給休暇の買取が可能かどうかは、会社に確認する必要があります。
このように、有給休暇は要件を満たす人すべてに与えられる権利です。ですが、「理由を伝えなければ有給休暇が取れない」、「会社が有給休暇の取得を許可してくれない」など、使いたいときに有給休暇を使えないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですが、法律では、そのような定めはなく、自由に有給を取得できるのです。ここからは、有給休暇を取得するうえでの基本的なルールについて、法律の観点から解説していきます。
労働基準法では、有給休暇を取得する際、理由の申告は求められていません。また、労働者が指定する日に有給休暇を与えなければならないとされています。
ただし、会社は、時季変更権というものを持っています。そのため、会社が「労働者が指定する日に有給休暇を使用させたのでは、事業の正常な運営を妨げられる」と判断する場合には、例外的に「別の時季に取得してくれ」と有給休暇の取得時季を変更させることができるのです。
たとえば、会社の全従業員が同じ日に有給休暇を取得する場合、事業の正常な運営を妨げられてしまいますよね。このような場合には、「有給休暇の取得時季を別の時季にしてほしい」として、変更する権利が会社にはあるということです。
労働基準法では、有給休暇を取得するにあたり「いつまでに申請をしなければならない」という定めはありません。そのため、一般的には会社の就業規則などに従って、申請する必要があります。
上記のとおり、有給休暇は労働者の権利ですから、会社は労働者の有給取得の申請を拒否することはできません。
すでに解説したように、会社は時季変更権を持っていますので、その時季に有給休暇を使用させることが「事業の正常な運用を妨げる場合」には、ほかの時季に変更することができます。しかし、この場合でも、あくまで取得時季を変更するものであって、有給休暇の申請自体を拒否するというのは違法です。
日本では、有給休暇の取得率が他国と比べて低いため、昨今の働き方改革に伴い、有給休暇を積極的に取ってもらうべくルールが変更されました。
会社は、1年間に有給休暇が10日以上与えられる労働者については、有給休暇が与えられたときから1年以内に5日の有給休暇を取得させなければなりません。これは、会社の義務です。有給休暇をいつ取得させるのかについては、会社が指定できますが、労働者の意見を聞かなければならないということになっています。
この取得義務化によって、有給休暇は取得しやすくなっていますし、取得できる環境が整いつつあるといえます。ただし、あくまで最低5日の取得が義務なのであって、年5日までしか有給休暇が取れないという意味合いではないことを覚えておきましょう。
これまでご説明してきたように、有給休暇の取得は労働者の権利であり、本来であれば、有給休暇は、会社の規則に則って、自由に使うべきものです。しかし、「仕事が忙しすぎる」、「人手不足」などの理由で有給休暇を使えない状況にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは、有給を使えないときの対処法を解説いたします。
「仕事が忙しすぎる」、「人手不足」などの理由により、有給休暇を使わせてもらえない場合、会社のその対応は違法です。また、そのような会社の環境自体にも問題があると考えられます。
そのため、会社に労働組合や相談窓口(コンプライアンス部、人事部など)があれば、会社の対応や、環境の改善を促してもらうよう相談してみるのも、一つの手段といえるでしょう。
会社の規模によっては、会社に相談窓口がない場合もあるでしょう。また、会社内部の相談窓口に相談したものの、状況が改善されないこともあるかもしれません。その場合、労働基準監督署という外部機関に相談するのも一つの手段です。
もっとも、労働基準監督所など外部機関に相談する場合には、事情を一から説明しないといけません。そのため、必要な情報をまとめておいたり、メールなどの記録があれば用意しておいたりすると、状況を理解してもらいやすいでしょう。
有給休暇が使えない会社に不満があれば、その会社を退職するという選択肢もあります。有給休暇を使わせてもらえず、身体を壊すような働き方を続け、実際に身体を壊してしまっては元も子もありません。そのため、退職するというのも一つの選択肢です。
なかには、有給休暇を使えないまま退職間際になってしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。これまで使えず、残ってしまった有給休暇。退職までにはきちんと消化したいですよね。そこで、退職する前に残っている有給休暇を使い切るにはどうすればいいのか解説していきます。
労働者が有給休暇を請求すれば、会社は拒否できません。そのため、「有給消化をしてから退職したい」と申し出ることは可能です。しかし、「退職することで会社に迷惑をかけるのに、さらに有給休暇を消化するのはもっと迷惑をかける…」と、自ら言い出しにくい方もいるかもしれません。また、会社から業務の引継ぎなどを理由に有給休暇を消化させてもらえない可能性も考えられます。
退職前に有給休暇を使い切る方法として、弁護士に退職代行を依頼することが考えられます。退職代行を依頼すれば、弁護士が退職の意思とともに、有給消化希望であることも併せて伝えることができます。残った有給休暇のすべてを使わせてもらえない場合もまれに存在しますが、弁護士による交渉の結果、有給消化後の退職を認めてくれる会社が多いです。
これまで解説してきたとおり、有給休暇は、勤務開始の日から6ヵ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上を出勤していれば、雇用形態にかかわらず付与され、自由に使うことができます。そして、有給休暇は労働者の権利であるため、会社が使わせないのは違法です。
有給休暇が使えないことに悩んでいる方は、しかるべき場所への相談や、退職・転職などで働く環境を変えることを検討してみてもいいかもしれません。
また、退職前に有給休暇を使い切りたいとお考えの方は、自分で会社と交渉する以外に、弁護士へ退職代行を依頼し、有給消化の交渉をしてもらうという選択肢があることも、覚えておくとよいでしょう。
弁護士の仕事は,法的紛争を解決に導くことだけでなく,依頼者の方の不安や悩みを解消することにもあると考えています。些細なことでも不安や悩みをお持ちであれば,気軽に弁護士に相談していただけたらと思います。依頼者の方にご満足いただけるリーガル・サービスを提供していけるよう全力で取り組んでいく所存です。
残業代請求には時効があります!まずはご相談を!
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