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業務委託やフリーランスでも残業代がほしい!条件やポイントを弁護士が解説

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「労働者」と一口に言っても、その働き方はさまざまです。雇用契約を結び会社に雇われている方もいれば、「業務委託契約」を結んでフリーランスのような働き方をしている方や、個人事業主として働いている方もいらっしゃるでしょう。「業務委託契約」を結んでいる方のなかには、会社に雇われていないから残業代は出ないものと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、働き方の実態次第では、「業務委託契約」を結びフリーランスで働いている場合でも労働基準法が適用されます。つまり、残業代が支払われていなければ違法となることがあるのです。
では、どのような場合に「業務委託契約」であっても残業代が支払われるべきなのでしょうか。法的な観点から詳しく解説していきます。

今回の記事でわかること
  • 業務委託契約と雇用契約の違い
  • 業務委託契約で働いている人が労働基準法上の「労働者」に該当するためのポイント
  • 業務委託契約で働いている人が残業代を請求する方法
目次
  1. 「業務委託契約」とは?
    1. 会社に雇用されている場合との違いは?
  2. 業務委託契約・フリーランスでも「労働者」に該当する場合がある!
    1. 法的な意味での「労働者」とは?
      1. 受注する業務を自由に選べるか
      2. 業務の進め方を細かく指示されているか
      3. 勤務時間や場所を指定されているか
      4. ほかの人に業務を代行させたり、手伝わせたりできるか
      5. 報酬が指揮監督下で業務を行ったこと自体に対するものか
      6. その他の補助的な要素
  3. 業務委託契約・フリーランスでも残業代を支払ってもらうには
    1. 証拠を集める
      1. 労働者性に関する証拠
      2. 残業時間に関する証拠
    2. 弁護士に相談する
  4. まとめ

「業務委託契約」とは?

「業務委託契約」とは、一言で言えば、主に企業や組織が自らの業務を、社外の業者や個人に任せる契約です。「雇用契約」の場合と異なり、発注者である企業と受注者の間には、業務の進め方などに関する指揮命令権がありません。そのため、発注者と受注者が互いに対等の立場であることを前提として契約を結ぶのが、「業務委託契約」の大きな特徴です。対等な立場が前提であるため、受けたい業務を自らが選べるというメリットがあります。

一方、雇用契約を結んだ労働者ではないため、労災保険などの社会保険の対象外となったり、会社が行ってくれる経理や税の申告などの手続を自ら行わなければならなかったりといったデメリットもあります。

会社に雇用されている場合との違いは?

会社から雇われて働いている場合は、雇用契約(または労働契約)を結んでいる状態です。雇用契約は、労働者が会社の指揮命令に服することが前提となっている点で「業務委託契約」と大きく異なります。そして、雇用契約を結んで働く場合、法的な意味での「労働者」に該当するため、労働基準法が適用されます。つまり、有給休暇や残業代が発生する、解雇に厳格な制約がかかる(簡単に契約を切られない)といった法的な恩恵を受けることができるのです。一方「業務委託契約」の場合、一般には法的な意味での「労働者」にはあたらないため、有給休暇は発生しませんし、発注者が残業代を支払う必要もありません。
要するに、法的な意味での「労働者」に該当するか否か、労働基準法が定める権利を有するか否かが、「雇用契約」と「業務委託契約」の大きな違いです。

業務委託契約・フリーランスでも「労働者」に該当する場合がある!

先ほど「業務委託契約」は、法的な意味での「労働者」には該当しないと解説しましたが、これはあくまでも一般論です。
実は、個々の働き方や業務の内容などの事情によっては、形式的に「業務委託契約」を結んでいても、法的には「労働者」であるとして、労働基準法の適用を受けられるケースがあるのです。では、どのような場合に「労働者」として扱われる可能性があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

法的な意味での「労働者」とは?

そもそも、法的な意味での「労働者」とはどういうものでしょうか。法的な「労働者」とは、単に仕事をしている人全般を指すものではなく、労働基準法で明確に定められています。

労働基準法第9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

この定義を分解すると、法的な意味での「労働者」といえる(「労働者性」が認められる)ためには、以下の2点が要素になっているとわかります。

  • 「使用される」=会社の指揮監督下で労働していること
  • 「賃金を支払われる」=「労働」そのものに対して報酬が支払われていること(労務対償性

そして、この2つの要素に該当するかどうかは、さまざまな事情を総合的に考慮して判断されます。一般的に判断要素として重要になるのは、以下の事情です。

1.指揮監督下の労働に関する要素
(1)仕事の依頼や業務命令等に対する諾否の自由
(2)業務遂行上の指揮監督の有無
(3)時間的・場所的な拘束性の有無
(4)業務の代替性の有無
2.報酬の労務対償性に関する要素
3.その他の補強要素
(1)事業者性の有無
(2)専属性の有無
(3)公租公課の負担等その他の要素

では、それぞれの中身について詳しく見ていきましょう。

受注する業務を自由に選べるか

受注する業務を自由に選んだり、業務命令への諾否を自由に決めたりできない場合、その発注者の指揮監督下にあると推定し、労働者性が認められると考えられます。具体的には、以下のような場合です。

  • 病気などの特別の理由がない限り、発注者からの依頼を断ることが想定されていない場合
  • 発注者からの依頼を断ることで著しい不利益を被る場合

このように、発注者である企業からの依頼を事実上断れない場合は、「諾否の自由がない」という判断に傾くでしょう。

業務の進め方を細かく指示されているか

発注者から、仕事の具体的な進め方について指示・命令がなされている場合は、その発注者の指揮監督下にあるものとして、労働者性が認められると考えられます。たとえば、以下のような場合です。

  • 運送の業務において、経路や出発時刻、運送方法などが細かく指定されている場合

このように、業務の遂行方法に細かい指定がある場合は、「指揮監督関係がある」という判断に傾くでしょう。

勤務時間や場所を指定されているか

発注者から、勤務時間や場所を指定・管理され、自分の意思で自由に決定できない場合は、「時間的・場所的に拘束されている」といえるため、労働者性が認められる事情の一つになると考えられます。特に、以下のような場合には、より拘束性が高まるものと考えられています。

  • 指定された場所でなければその業務が行えない場合
  • ある時間帯に業務を行わなければ業務の目的が達成できない場合

このように、勤務時間や場所を自分で自由に決められない場合は、「時間的・場所的な拘束性がある」という判断に傾くでしょう。

ほかの人に業務を代行させたり、手伝わせたりできるか

発注者から請け負った業務について、受注者が自身の判断のみで代役を立てたり、補助者をつけたりできない場合、発注者からの「指揮監督関係がある」として労働者性が認められる事情の一つと考えられます。反対に、受注者が自身の判断のみで代役を立てたり、補助者をつけたりできる場合には、「指揮監督関係がない」という判断に傾くでしょう。

報酬が指揮監督下で業務を行ったこと自体に対するものか

報酬・給与の支払い方などに照らして、支払われた報酬が、発注者の指揮監督下で労働したことに対する対価であると評価できる場合は、「報酬の労務対償性」が認められると考えられます。具体的には、以下のような場合です。

  • 仕事のできではなく作業時間をベースに報酬が定められている場合
  • 残業代に相当する報酬が支払われている場合
  • 欠勤したり労働時間が少なかったりした場合に報酬が控除される場合

このような場合には、成果ではなく労働を提供することそれ自体に対する報酬であり、「報酬の労務対償性」が認められると考えられるのです。

その他の補助的な要素

「労働者」に該当するか判断するうえで特に重要な要素は、上記に挙げた5つですが、これ以外の事情も判断要素になることがあります。
たとえば、受注者が自ら事業を営んでいると判断される(いわゆる「事業者性」が認められる)ケースでは、「労働者性」の判断において不利にはたらく可能性があります。具体的には、以下のような場合です。

  • 業務に必要な道具や機材を受注者自らが用意・負担している場合
  • 発注者から支払われる報酬が、同様の業務を行っている労働者と比較して著しく高額である場合

反対に、「労働者性」の判断において有利になるケースもあります。具体的には、特定の発注者に対して専属的な働き方をしており、事実上ほかの発注者からの業務が受けられない場合などが挙げられます。ほかにも、以下のような事情がある場合には、「労働者性」の判断において有利になる可能性があります。

  • 報酬について源泉徴収がなされている場合
  • 労災保険に加入している場合
  • 退職金制度が存在する場合
  • 正社員同様の福利厚生が存在する場合

なお、厚生労働省では、フリーランスの方を対象にした働き方に関するガイドラインを策定しています。今回のコラムのテーマである労働者性はもちろん、これ以外に発生し得るトラブルに関する情報も掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

業務委託契約・フリーランスでも残業代を支払ってもらうには

ここまで、業務委託契約やフリーランスの方が法的な意味での「労働者」に該当するかどうかのポイントを解説してきました。もし、上記のポイントに該当する方で、1日8時間以上や週40時間以上の仕事を日常的に行っているのであれば、発注者に対して残業代を請求できる可能性があります。では、どのように残業代を請求すればよいのでしょうか。ここからは、残業代を請求するために何をすべきか、解説します。

証拠を集める

労働者が法的な意味での「労働者」に該当することや、残業をしたことは、原則として労働者が主張・証明すべき内容です。そのため、まずはご自身で可能な限り証拠を集めておくのがよいでしょう。
業務委託契約・フリーランスの方の場合、法的な意味での「労働者」に該当するかどうかが争点となるため、集めるべき証拠として以下の2つが挙げられます。

  1. 労働者性に関する証拠
  2. 残業時間に関する証拠

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

労働者性に関する証拠

労働者性に関しては、個々の事情によって集めるべき証拠が多岐にわたることがありますが、たとえば、以下のものが証拠となり得ます。

  • 業務委託契約書
  • 発注・受注書
  • 仕様の指示書
  • 発注者との連絡メール
  • 報酬の明細など

このように、業務の進め方や内容、報酬の支払われ方がわかる証拠があるとよいでしょう。

残業時間に関する証拠

残業時間に関しては、たとえば、以下のものが証拠になり得ます。

  • 仮にタイムカードなどで業務時間が管理されていればその資料
  • 業務時間が管理されていなければ、発注者とのやり取りやパソコンのログなど

このように、自身が作業した時間がわかるものを記録・保存しておくとよいでしょう。

残業代を請求するためには、このほかにも集めるべき証拠がある場合もあります。証拠集めの詳しい情報については、下記のコラムも合わせてご覧ください。

弁護士に相談する

労働者性は、ある要素に該当していればただちに認められる・認められないというわけではなく、非常に多くの要素から検討して見通しを立てなければなりません。そのため、労働者が自ら判断することは極めて困難です。また、残業代の計算自体も、最大で3年間にわたる勤務状況を精査したうえで1日1日計算しなければならず、非常に手間がかかる難しい作業となります。
そこで、残業代の請求を検討する場合は、弁護士への相談をおすすめします。労働問題に詳しい弁護士であれば、過去の裁判例や法令・通達等に基づいて労働者性の判断について見通しを立て、複雑な残業代の計算もすることが可能です。

まとめ

これまで解説したとおり、業務委託契約やフリーランスとして働いていても、実情によっては法的な意味での「労働者」といえる(「労働者性」が認められる)ケースがあります。そして、労働者性が認められれば、1日8時間以上や週40時間以上の仕事を日常的に行っていた場合に、発注者に対して残業代を請求できる可能性があります。
しかし、労働者性の判断や残業代の計算には、専門的な知識が必要であり、多くの場合、自分で残業代を請求することは難しいでしょう。そのため、残業代の請求をお考えであれば、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士であれば、過去の判例などに基づいて労働者性の判断について見通しを立て、複雑な残業代を計算できるだけでなく、煩雑な手続や交渉もあなたの代わりに行うことができます。

アディーレには、労働問題に精通した弁護士が多数在籍しており、労働者性について適切な見通しを立てたうえで残業代を請求することが可能です。「自分が労働者に該当するのかわからない」という業務委託契約やフリーランスで働いている方でも、ご相談のなかで見通しを立てることができます。アディーレでは、残業代に関するご相談は、何度でも無料です。もし、あなたが長時間働いているのであれば、「業務委託契約だから…」「フリーランスだから…」と諦める前に、まずはお気軽にご相談ください。

  • 現在アディーレでは、残業代請求を含む労働トラブルと、退職代行のみご相談・ご依頼をお引き受けしております。 残業代請求と退職代行に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。

監修者情報

岩井 直也
弁護士

岩井 直也

いわい なおや
資格
弁護士、行政書士、ファイナンシャルプランナー検定2級、E資格
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部

私は、困っている人に対して、法律という武器を駆使して手を差しのべたいと思い、弁護士になりました。しかし、いまだ弁護士へ相談する心理的・経済的なハードルは存在し、結果として泣き寝入りしているケースもまだまだ多いのではないかと思います。そのような状況を変えるべく、事務所として施策を進めることはもちろん、私個人としても「この人に頼めば安心だ」と思っていただけるよう質の高い仕事をし、安心してご依頼いただける弁護士になりたいです。これから、日々邁進していく所存です。

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