残業代請求コラム

残業代請求に必要な証拠は?証拠がない場合の対処法も解説

公開日: 更新日:

裁判の勝敗に大きな影響を与えるのが、「証拠」。それは、未払いの残業代を会社に請求する場合でも同じです。また、裁判の前段階にあたる、会社との話合い(任意交渉)の際も、証拠が揃っていれば交渉を有利に進めることができます。
そこで本コラムでは、残業代請求にはどのような証拠が必要なのか、証拠がある場合とない場合とで、見通しにどのような違いがあるのかについて、詳しくみていきます。

今回の記事でわかること
  • 残業代を請求するうえで、どのような証拠が必要・重要となるのか
  • 証拠がある場合に弁護士に残業代請求を依頼するメリット
  • 証拠がない場合に弁護士に残業代請求を依頼するメリット
目次
  1. 残業代請求に必要な証拠とは?
    1. なぜ証拠が重要なのか?
    2. (1)給料に関する証拠
    3. (2)実際の残業時間に関する証拠
    4. 「同僚の証言」は証拠として認められる?
  2. 証拠がある場合・ない場合の見通しや退職後の対処法
    1. (1)証拠がある場合
    2. (2)証拠がない場合
      1. 在職中なら「今からできる証拠集め」を
      2. 退職後でも「意外なもの」が証拠になる可能性がある
    3. 弁護士による「証拠の開示交渉(証拠開示請求)」とは
  3. まとめ

残業代請求に必要な証拠とは?

残業代請求に必要な証拠は、大まかに分けて、「給料に関する証拠(残業代をいくらもらっていたか)」「実際の残業時間に関する証拠(残業時間はどのくらいだったか)」に分けられます。

なぜ証拠が重要なのか?

未払い残業代は、下記の式で求めます。

1時間あたりの残業代 × 実際に残業した時間数 - すでに支払われた残業代

そのため、「1時間当たりの残業単価」「何時間働いたか(実際に残業した時間数)」の2点を客観的に証明する必要があります。

(1)給料に関する証拠

証拠の種類 概要・補足
雇用契約書・労働条件通知書 会社が交付を義務付けられている書類
給料明細・預金通帳 実際に支払われた金額を証明するもの
就業規則・賃金規程 会社全体の賃金ルールが記されたもの

会社は労働者を雇う際、給料などの労働条件が記された「雇用契約書」「労働条件通知書」(名称は会社によって異なる場合があります)を労働者に渡す義務があります(労働基準法第15条1項後段、労働基準法施行規則第5条3項、4項)。きちんとした会社であれば、入社時にこのような書面を渡しているはずですから、まずはこれらが給料に関する証拠となります。

もし、これらの書面を受け取っていない、または紛失したという場合でも、あきらめる必要はありません。「給料明細」「預金通帳」なども、実際に会社から支払われていた給料の内容を示すものとして、証拠になり得ます。

また、「就業規則」「賃金規程」といった、従業員の労働条件を一律に定めた規則が作成されている会社もあります。これらの規則について、コピーをとっておくことも有効です。

(2)実際の残業時間に関する証拠

証拠の種類 概要・補足
【改ざんが難しい客観的な記録】
タイムカード・勤怠管理ソフト 出退勤時刻が機械的に打刻されたもの
タコグラフ 運転業務などにおいて、走行時間を記録したもの
【業務の実態を示す証拠】
PCのログイン・ログオフ履歴 労働時間を推認させるもの
業務報告メール・日報 送信時刻や記載内容から労働時間を推認させるもの
自筆のメモ(日記など) 自分で出退勤時刻を記録したもの
家族等への帰宅連絡(LINE等) 退勤のタイミングを裏付ける補助的な証拠

実際の残業時間に関する証拠として代表的なものが、「タイムカード」です。労働者一人一人が何時何分に出勤・退勤したのかが機械的に打刻されるため、改ざんが難しく、一般的には最も強い証拠といえます。昔ながらの紙製のタイムカードだけでなく、最近では「勤怠管理ソフト」を導入している会社もありますよね。こうしたソフトの記録も同様に、有力な証拠となります。
また、トラックやタクシーの運転手の方であれば、走行時間を記録した「タコグラフ」がこれらに準じる証拠となります。

では、もしこれらの証拠が存在しない、またはサービス残業をさせられていて、記録上では実際の残業時間がわからないといった場合は、どうすればいいのでしょうか?

これまでの裁判例では、「業務報告メール」の送信時刻「パソコンのログイン・ログオフ記録」の時刻に基づき、労働者の残業時間を認定したケースがあります。タイムカードやタコグラフと比べ、証拠の強さは劣りますが、これらのメールや記録も、残業時間に関する証拠になります。業務の開始・終了時刻などを書いて提出する日報なども同様です。

さらに、もう一段弱い証拠ではあるものの、「出勤・退勤時刻を自分で記録したメモ」や、「家族や交際相手などに『今から帰宅する』という旨を伝えていたLINE」なども、残業時間を示すものとして有効な場合があります。

(3)「同僚の証言」は証拠として認められる?

ところで、当事務所にご相談くださる方々に「残業時間がわかる証拠はありますか?」とお伺いすると、「同僚の○○さんは、私が毎日××時ごろまで残業していたのを知っていますから、証言してくれるはずです」というお話をいただくことがあります。このような、「同僚の証言」は、証拠として有効なのでしょうか?

よくドラマに出てくる証人尋問の劇的なシーンを思い浮かべると、こうした証言も決定的な証拠だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、残業時間を証明する場合、下記のような難点があるため、ほとんどのケースで有効な証拠とならないのが実情です。

  • 同僚の方が、あなたの残業時間を毎日細かく正確に記憶していることはありえず、「大体いつも何時間くらい」といった程度の証言にとどまること
  • 在職中の同僚が、会社に不利となる(残業代を請求しようとする方にとっては有利な)内容を、正直に証言してくれるとは期待できないこと
  • 退職後の元同僚であれば、辞めた会社への不満などを背景に、会社に不利な内容を誇張するおそれがあり、裁判所もたやすく証言を鵜呑みにはしないこと

したがって、在職中に残業代請求をする場合には、同僚の方などに証言を頼むのではなく、客観的な証拠となるタイムカードのコピーや写真などを可能な限り保管しておくことが、極めて重要なのです。

証拠がある場合・ない場合の見通しや退職後の対処法

それでは、残業代請求に必要な証拠が手元にある場合とない場合とで、見通しがどのように変わるのか見ていきましょう。

(1)証拠がある場合

残業代請求に必要な証拠がしっかり揃っていれば、弁護士が吟味し、毎月の給料や毎日の残業時間を1円・1分単位で詳細に計算して請求することができます。証拠がなく、1時間単位のようなざっくりとした概算では、法律上本来支払われるべき残業代よりも少額になってしまうおそれがありますが、証拠があればこのような事態を防げるわけです。

また、裁判になった場合、証拠が揃っているほうが有利な判断を得やすいことは言うまでもありません。さらに、弁護士に残業代請求をご依頼いただく場合、いきなり裁判となるわけではなく、まずは会社との話合い(任意交渉)を行うのが通常です。この交渉も、「裁判になった場合の見通し」をお互いが見極めながら進めていくため、証拠があるほうが、よりこちらの主張に近い内容で交渉をまとめられる可能性が高まります。

(2)証拠がない場合

では、「残業代請求に必要な証拠が手元にない」、「すでに会社を退職してしまったため、今からタイムカードなどの証拠をコピーすることができない」という場合、請求はもはや難しいのでしょうか?

実はこのような場合でも、弁護士にご依頼いただくことで、請求が可能になるケースが多くあります。

在職中なら「今からできる証拠集め」を

あなたが現在も在職中の場合、今日からでも証拠を集めることが可能です。

  • ご自身の記録を残す:
    毎日の始業・終業時刻を分単位で手帳や日記に記録する。
  • データの保存:
    業務メールの送信履歴、PCのログイン・ログオフ画面のキャプチャ、業務日報のコピーなどを手元に残しておく。

これらはタイムカードの代わり、あるいはタイムカードの正確性を補強する貴重な証拠となります。

退職後でも「意外なもの」が証拠になる可能性がある

「タイムカードがないから証明できない」と思い込んでいませんか?実は、一見関係なさそうな記録が有力な証拠になることがあります。

  • 交通系ICカード(Suica/PASMO等)の利用履歴:
    改札を通った時刻から、退勤時刻を推計できる場合があります。
  • スマホのGPS位置情報やGoogleマップの「タイムライン」:
    会社に滞在していた時間を示す客観的なデータになります。

これらが法的に有効な証拠となり得るか、どのように組み合わせれば説得力が増すかは、専門的な判断が必要です。「手元に何もない」と決めつけず、まずは弁護士へアドバイスを求めてみてください。

そして、繰り返しとなりますが、裁判の前段階の話合い(任意交渉)は、「裁判になった場合の見通し」をもとに進められるものです。労働者が弁護士に依頼して“本気”の請求におよんだ場合には、会社としても「裁判になるかもしれない…」と考えることでしょう。 裁判において、裁判所は証拠となりそうな文書を持っている者に対し、文書提出命令(民事訴訟法第223条1項)を出すことができます。
裁判の段階で、いずれ文書提出命令による証拠の提出を求められるのであれば、会社としても早期解決のため、話合い(任意交渉)の段階から自発的に開示するほうが合理的であるといえます。実際に、弁護士から会社に証拠の開示を求めると、応じてもらえるケースは数多くあります。

弁護士による「証拠の開示交渉(証拠開示請求)」とは

労働者が個人で会社に「タイムカードを見せてほしい」と言っても、拒否されたり無視されたりすることは珍しくありません。
しかし、弁護士が「受任通知」を送り、会社に対して「労働時間の記録を開示せよ」と要求することで、多くの会社は開示に応じます。

まとめ

ここまで、残業代請求に必要な証拠についてお話ししました。証拠の有無によっては、支払われる金額に違いが生じることもありますので、適切な残業代を請求するためにも、可能な限り在職中から証拠を集められるようにしたいですね。

また、残業代請求を弁護士にご依頼いただくと、証拠を集められる可能性が高まるだけでなく、集めた証拠を経験に基づき吟味し、精密な計算によりしかるべき交渉ができるなど、労働者ご自身での請求にはない大きなメリットがあります。残業代請求をお考えの方は、弁護士へのご相談をおすすめします。

残業代は、あなたが頑張って働いた証です。「会社に未払い残業代を請求したいけど、どうすればいいかわからない」、「残業代がいくらもらえるのかわからない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひアディーレ法律事務所までご相談ください。

監修者情報

山内 涼太
弁護士

山内 涼太

やまうち りょうた
資格
弁護士、応用情報技術者、基本情報技術者
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部、東京大学法科大学院

裁判に関するニュースに寄せられた、SNS上のコメントなどを見るにつけ、法律家が法的な思考をもとに下した判断と、多くの社会一般の方々が抱く考えとのギャップを痛感させられます。残念でならないのは、このようなギャップを「一般人の無知」と一笑に付すだけで、根本的な啓発もなく放置したり、それを利用していたずらに危機感を煽ったりするだけの法律家が未だにいることです。法の専門家として、専門知を独占するのではなく、広く一般の方々が気軽に相談し、納得して、法的解決手段を手に取ることができるよう、全力でサポートいたします。

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