監修者情報
- 資格
- 弁護士、医師
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 京都大学医学部
「しんどいのに声を上げられない」、「自分一人の力ではどうにもできない」。そんな立場にある人に法的な援助をしたいと考え、私は弁護士になりました。あなたの悩みは、法律で解決できるかもしれません。当事務所は敷居が低く、相談をお考えの方にとって身近な法律事務所であることが自慢です。あなたの悩みを解決するために、まずはお気軽にお声がけください。
残業代請求コラム
公開日:
残業代請求を検討されている方のなかには、「いくらもらえるかわからないから請求に踏み切れない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に行動に移すためにも、「残業代請求でどのくらいの金額を回収できるのか」というのは気になるところですよね。
この記事では、「残業代請求の和解金に相場はあるの?」という疑問にお答えするとともに、和解金を決めるのに考慮される要素や、和解金が減額されないための対策について解説いたします。
結論からいえば、和解金に相場というものはありません。
給料の高い人がたくさん残業をしていれば残業代は多くなるはずですし、会社がきちんと残業代を支払っていなければ、請求できる金額は多くなるはずです。実際には、給料は職業によってさまざまで、残業の多さも人それぞれ。さらに、会社がきちんと残業代を支払っているかなども考慮すると、和解金に相場はないといえるでしょう。
残業代がいくら請求できるかは、実態に基づいて計算してみないとわからないのです。
和解金の金額を決める要素はいろいろありますが、重要なものとして以下の3つが挙げられます。
これらの重要な要素について、順に詳しく説明していきます。
会社が労働者を働かせていいのは、基本的に、1日8時間かつ週40時間以内とされています。しかし実際には、会社は、36協定を結ぶなどして、基本の時間を超えて労働者を働かせることが多々あります。
この場合、会社は、たとえ36協定の範囲内であっても、基本的な労働時間を超えた分について、時給換算した給料を25%以上割増した金額で残業代を支払わなければなりません。
このとき、支払われていない残業代の金額が多いほど、和解金は高額になりやすいといえます。
実際の残業時間を申告して残業代を計算し、いざ請求してみると、会社が「残業時間はもっと少なかったはずだ」と言ってくることがよくあります。
では、実際の残業時間はどれくらいなのか、どのように判断しているのでしょうか。
日本では、自分たちで解決できない争いごとは裁判所が解決することになっています。裁判所では、証拠に基づいて、残業時間を判断するのがルールです。正しく打刻されたタイムカードのような確実な証拠があれば、会社は「裁判所に持ち込まれたら負ける」と考えるので、労働者の言い分を認めてくれることが多くなります。
そのため、労働者と会社の残業時間に関する主張が違う場合、証拠をもとに残業時間を判断するのが一般的です。このように、証拠の有無は、和解金の金額に関わる重要な要素となります。
上記のような証拠を提示したとしても、会社が残業代を全額支払おうとしないことがあります。このとき、和解することで裁判をするための時間や費用を節約できるかどうかを考えることが必要です。
裁判をすれば勝てるとしても、裁判には、時間と費用がかかります。裁判は、1年以上かかることが多く、労働審判でも数ヵ月かかります。弁護士を使う場合には弁護士に払うお金も必要ですし、弁護士費用は自分で負担しなければなりません。
しかし、話合いだけで解決できれば、労働審判や裁判でかかる時間と費用を節約できます。そのため、会社と労働者は、互いにどうすれば賢いのかを考えて和解金の金額を決めることになります。
以上の解説を踏まえ、残業代請求をした結果を3つのパターンに分けて、それぞれ、どのようなケースでどのような結果になるかを説明していきます。
確実な証拠が揃っていて会社に勝ち目がない場合には、会社は「争うだけ時間の無駄」と考えて、素直に残業代の全額が支払われることがあります。具体的には、上司の確認印を押してもらったタイムカードがあり、残業時間について争いようがない場合などは、残業代が全額支払われる可能性があるといえるでしょう。
また、証拠が弱くても、請求した金額が高額でなければ、争うための弁護士費用など必要経費のほうが高くつくと会社が考えて、全額が支払われることがあります。
ただし、弁護士をつけずに自分で残業代請求をする場合には、注意しなければなりません。というのも、会社がタイムカードを出してこないことや、「労働者が作った請求書が正しいか判断できない」などと言ってうやむやにされることがよくあるからです。
残業代は、もともと給料日に支払われなければならないものです。しかし、タイムマシーンで昔に戻ることはできませんので、未払いの残業代は遅れて支払われることになります。そのため、会社は、遅れた分の利息(遅延損害金)を支払われなければならないのです。利率は、在職中であれば年3%、退職後であれば年14.6%になります。
まれに、会社が遅延損害金をつけて残業代を支払ってくれるケースがあります。その多くは、会社が弁護士をつけず、しかも残業時間を争わない場合です。会社は労働者側の弁護士と交渉することを嫌がって、請求どおりに、遅延損害金を上乗せして残業代を支払うことがあります。
なお、付加金は裁判をしないと請求できません。そのため、和解をする場合には支払われません。
いろいろなケースがありますが、残業の証拠があまりないから全部は支払われないというのがよくあるケースです。残業の証拠が弱いと、裁判に持ち込んでも勝てるかどうかわからないため、一部だけ支払ってもらい和解することがよくあります。
なるべく全額に近い金額を支払ってもらうためには、退職する前から証拠を集めておくことが大事です。タイムカードをきちんと打刻することはもちろん、タイムカードがなくても、以下のように対策すれば、証拠として提示することができます。
このように、残業の証拠を残しておくことが大切です。証拠があるかどうかで、残業代請求の結果が大きく変わります。
以上のように、残業代請求における和解金は、実際の残業時間に基づく残業代の金額だけでなく、残業時間を中心に証拠があるかどうかなどの個別の事情で決まるものです。残業代を請求した経験がないとなかなか具体的な見通しを立てるのは難しいでしょう。
そこで、まずは弁護士に相談し、自分にいくらの未払い残業代があるのか計算してもらいましょう。そして、手持ちの証拠だけで十分なのか、もっと証拠を集めないと大きく減額されるのかを、早めにアドバイスしてもらうことが大切です。
証拠集めは、退職したあとでは難しくなります。和解金をなるべく減額せず早期解決を目指すには、とにかく早めに弁護士に相談しておくことが大切です。
これまでに解説したように、残業代請求の和解金に相場はありません。以下の要素を中心に考えて、和解金の金額が決まってきます。
また、残業代が全額支払われるのか、遅延損害金も支払ってもらえるのか、それとも一部だけしか支払ってもらえないのかどうかは、さまざまな要素が考慮されます。特に、残業の証拠をどれだけ集められるかが大きく結果に関わってくるため、退職する前から準備しておくことが大切です。 具体的な見通しを立て、なるべく高額で早期解決するためにも、早めに弁護士へご相談ください。
「しんどいのに声を上げられない」、「自分一人の力ではどうにもできない」。そんな立場にある人に法的な援助をしたいと考え、私は弁護士になりました。あなたの悩みは、法律で解決できるかもしれません。当事務所は敷居が低く、相談をお考えの方にとって身近な法律事務所であることが自慢です。あなたの悩みを解決するために、まずはお気軽にお声がけください。
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