退職代行を使うメリット
退職代行サービスの最大のメリットは、退職に伴うストレスと負担を大幅に軽減できることです。具体的には、以下のようなメリットがあります。
退職を言い出す緊張から解放される
多くの人にとって、上司や人事部門に退職の意思を伝えることは大きなストレスです。
「上司が怖くて緊張してしまう…」「退職理由を説明するのが面倒くさい…」など、さまざまな心理的障壁があるのではないでしょうか。
法律上、労働者には退職の自由が認められていますが、実際に退職を申し出るのは心理的に難しいものです。
退職代行サービスは、この心理的障壁を取り除き、スムーズな退職を可能にします。
会社からの嫌がらせや引き止めを防げる
退職を申し出たあと、会社から嫌がらせを受けたり、しつこく引き止められたりするケースがあります。
上述のように、法律上は労働者が自由に退職できると定められているものの、実際には会社がこれを妨げる行為におよび、退職を断念させようとすることがあるのです。
退職代行サービスを利用すれば、会社との連絡を任せることができるため、こうしたトラブルを回避できる可能性があります。
たとえば、退職届の受理を拒否されるケースでも、内容証明郵便で退職の意思表示を行うなどの対応を取ることができます。
面倒な手続を自分でする必要がなくなる
会社を退職する場合、実際には以下のような手続が必要になります。
- 退職の意思を伝える
- 業務の引継ぎや退職日の調整
- 有給休暇の消化交渉
- 貸与品の返却方法の確認
- 離職票や源泉徴収票などの請求(会社から交付されない場合)
上記のような手続は、精神的に大きな負担となるだけでなく、多大な時間と手間を要します。
特に関係が悪化した職場との交渉は、より心身をすり減らすことになるでしょう。
しかし、退職代行を利用することで、そういった手続や交渉を任せることができます。
ただし、退職代行の依頼先によっては、法律上、対応できない内容もありますので、のちほど詳細をご説明します。
会社からの要求に適切に対応できる
悪質なケースでは、「あなたが退職したせいで、会社に損害が出た」などと主張され、損害賠償を請求されることがあります。
ご自身だけでは、そういったトラブルの対応は難しいといえますが、弁護士による退職代行なら、その心配もいりません。
弁護士であれば、豊富な法律知識や交渉経験をもとに、万が一というケースにも適切に対応できます。
退職代行の利用を検討すべき3つの場面
退職代行サービスは、以下のような場面で特に有効です。
上司と直接話すのが怖いとき
パワーハラスメントや過度なプレッシャーを受けている場合など、上司と直接話すことに恐怖を感じる方は、退職代行サービスの利用を検討しましょう。
労働施策総合推進法により、使用者にはパワーハラスメント防止措置が義務付けられていますが、ご存知のとおり、実際にはまだ多くの職場でパワハラが存在します。退職代行サービスを利用すれば、こうした状況から安全に脱出できる可能性が高まります。
会社から賠償請求などを受けそうなとき
「退職するなら、お前の採用や研修にかかった費用分の損害賠償を請求する!」など、退職をしようとすると、労働者を引き留めるため、金銭的な請求を示唆して脅してくる会社もあります。
退職代行サービスを利用すれば、会社の請求に本当に応じなければならないのか、それとも法的に理由の無い請求にすぎないのかなどのアドバイスを受けつつ、的確に対応してもらえます。
会社が辞めさせてくれないとき
退職の意思を伝えても、会社が手続を進めてくれない場合があります。
特に、入社して間もない方などは、上司に今後の対応をはぐらかされたりして、退職をすぐに受け入れてもらえないケースもあるでしょう。
このように、会社が退職の話に取り合ってくれない場合には、退職代行の力を借りるのも1つの手段です。
退職代行の使い方4つのステップ
退職代行は、典型的には以下の4つのステップで進みます。各ステップで注意すべき法的ポイントも押さえておきましょう。
相談する
多くの退職代行サービスでは、まず無料相談を行います。
この段階で、自分の状況に退職代行サービスが適しているか、どのようなサポートが受けられるかを確認できます。
労働問題に詳しい弁護士による退職代行であれば、専門知識に基づいた法的なアドバイスも得られます。
相談の際は、退職理由や希望する退職日など、具体的な要望を明確に伝えましょう。
必須ではありませんが、労働契約の内容や就業規則など、詳細な情報を準備し、
自分の状況を詳しく伝えられるとより理想的です。
契約する
相談したうえで依頼することに決めた場合には、契約を締結します。
料金の支払いに関しては、前払いが一般的ですが、成功報酬制を採用している退職代行サービスもあります。
料金は業者やサービス内容によって大きく異なり、数万円から十数万円まで幅広いため、事前に十分な確認が必要です。
また、一見とても安い業者でも、「サービスの範囲が限られていた」、「有資格者のアドバイスをまったく受けられなかった」、「有資格者しか行えないはずのサービスを提供する違法な業者だった」、などの落とし穴があるため注意してください。
代行業者が会社に連絡する
退職代行業者が会社に連絡し、退職の意思を伝えます。この段階では、労働者本人が直接会社とやり取りする必要はありません。代行業者が代わりに会社とやり取りをしてくれます。
退職に関する交渉を進め、退職日を迎える
弁護士による退職代行であれば、退職の意思を伝えるだけでなく、有給休暇の消化などについても法律に則って交渉をしてくれます。
「引継ぎをしてほしい」、「○○の費用を支払ってほしい」など、会社から要求を受けることもありますが、これらに対しても法的根拠に基づいて的確に反論していくことが可能です。
退職代行を使うときの注意点
退職代行サービスを利用する際は、以下の点に注意しましょう。
口コミに見せかけた広告には要注意
最近では、「退職代行」で検索すると、各業者の口コミを挙げたり、点数をつけたりして比較しているサイトが多く見つかります。また、SNSでは「○○の退職代行サービスを使ったらすぐ退職できた!」といった投稿もあります。
しかし、これらをよく見ると、隅に小さな文字で「PR」と書いてあった…というものが少なくありません。公平な比較サイトや利用者の体験談のようなスタイルを使いながら、特定の業者を宣伝する広告だったのです。「評価が高い業者だから安心!」とすぐに鵜呑みにせず、よく吟味して業者を選びましょう。
最低限の引継ぎ対応は行う必要がある
退職代行を利用して辞める場合でも、「引継ぎをまったくしなくてよい」というわけではありません。
というのも、労働者には、信義則上、退職時に会社に著しい損害を与えないよう配慮する義務があるとされています。
引継ぎをまったく行わなかったことが原因で、会社に明確かつ重大な損害が発生した場合、損害賠償を請求されるかもしれません。
したがって、最低限の引継ぎは行うべきでしょう。
具体的には、「業務の進捗状況」や「関連資料の保管場所」などをまとめた引継ぎ資料を作成し、退職代行業者を通じて会社に渡してもらうのが一般的な方法です。
料金とサービス範囲をしっかり確認する
退職代行サービスの料金は業者によって大きく異なります。
一般的に数万円から十数万円程度ですが、料金体系(固定料金か成功報酬制か)や追加料金の有無をしっかり確認しましょう。
また、解約条件なども把握することが重要です。
他方、いくら安くても、サービス範囲が希望していた内容よりも狭ければ意味がありません。退職の意思表示だけなのか、交渉まで対応できるのかなど、必ず料金とセットで確認してください。
信頼できる業者を選ぶ
退職代行を依頼するときは、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
弁護士法に違反するリスクなく交渉を行なってくれる、法律事務所が運営しているサービスを選びましょう。「弁護士監修」などと謳って、まるで弁護士が直接会社と交渉してくれるかのようにアピールしている業者もありますが、法律事務所とはまったく異なります。
このような業者も、結局は一般的な会社と同じであって、交渉を代理することはできないため気をつけましょう。
退職代行の依頼先ごとの違いやメリット
一般企業や労働組合に退職代行を依頼するメリット
比較的安価に依頼できる点が、最大のメリットと言えるでしょう。
特に、会社との間に大きなトラブルがなく、交渉すべき内容が少ない場合には、有効な選択肢となり得ます。
■一般企業による退職代行
弁護士や労働組合による退職代行と比べて、もっとも費用を抑えられる傾向にあります。
「退職の意思を代わりに伝えてもらうだけでいい」という限定的な要望であれば、最初に検討すべき依頼先といえます。
■労働組合による退職代行
労働組合には「団体交渉権」という権限が認められているため、一般企業による退職代行よりも、柔軟な対応をしてもらえる場合が多いでしょう。また、弁護士に依頼するより費用を抑えられる点もメリットです。
ただし、弁護士のように正確かつ豊富な法律知識をもとに交渉することはできません。裁判に発展した際の対応もしてもらえないため、その点には注意が必要です。
弁護士に退職代行を依頼するメリット
弁護士はさまざまな法的知識を有しています。労働問題の知識や経験が豊富な弁護士なら、労働基準法や労働契約法、民法などに基づいて、適切に退職交渉を進めてくれます。
たとえば、未払い残業代の請求や退職金の計算など、複雑な法的問題も追加で依頼したいという場合にも対応できます(ただし、退職代行サービスとは別に料金が発生するものもあります)。
また、退職しようとする労働者に対して「退職するなら、お前の採用や研修にかかった費用分の損害賠償請求をする!」など、会社が引留め目的で金銭などを請求してくる場合もあります。
弁護士による退職代行サービスなら、これらの請求を受けたとしても的確に反論することができますし、そもそも、会社から無謀な請求を受けるリスクも減らせるでしょう。
さらに、競業避止義務や秘密保持義務など、退職後の行動に関する注意点のアドバイスも受けられるため、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
依頼先ごとの違いまとめ
一般企業
◆料金相場
2万円 ~ 5万円程度
◆対応範囲
◆メリット
◆デメリット
- 退職日の調整や有給消化など、一切の「交渉」ができない(法律上、認められていない)
- 会社側が少しでも反論してきた場合、適切な対応ができないリスクがある
労働組合
◆料金相場
3万円 ~ 5万円程度
◆対応範囲
- 退職の意思を会社へ伝えること
- 団体交渉権の範囲内での交渉
◆メリット
- 弁護士より費用を抑えつつ、会社側と交渉をある程度依頼できる
◆デメリット
- 代理人ではないため、裁判沙汰になった場合の法廷対応はできない
- 会社からの損害賠償請求といった、労働条件以外の法律問題には対応できない
弁護士
◆料金相場
5万円~7万円程度
◆対応範囲
- 退職の意思を会社へ伝えること
- 有給消化の取得交渉や退職日の調整
- 未払い残業代などの請求
- 損害賠償請求など、あらゆる法的トラブルへの対応
◆メリット
- 一般企業や労働組合と比べて、交渉範囲に制限がない
- 会社側がスムーズに退職を認めるケースが多い
- 裁判や労働審判に発展しても、代理人になって対応してもらえる
- 「非弁行為」のリスクがない
◆デメリット
- ほかの依頼先と比較して、費用が高額になる傾向がある
依頼先を選ぶ基準は?
依頼先の違いはご説明したとおりですが、「結局、どこへ依頼すればいいの…?」と悩む方も多いはずです。
そういった場合は、たとえば以下のような基準を参考にされるとよいでしょう。
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- とにかく費用を抑えて、退職だけしたい場合
- 会社とトラブルがなく、有給消化などの交渉も不要な方は、一般企業や労働組合による退職代行が有力な選択肢になります。
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- 多少費用がかかっても、安心して退職したい場合
- 会社側と何らかのトラブルがあり、退職にあたって不安がある方は、弁護士による退職代行を利用されるべきです。
会社側との交渉が必要になっても、弁護士が法的知識をもとに適切な対応をしてくれるため、安心して退職することができます。
退職代行を使ったあとの仕事探しへの影響
退職代行サービスを利用したあとの仕事探しへの影響は、一般的には限定的です。
ただし、同業他社への転職を考えている場合は注意が必要です。ケースバイケースではありますが、退職代行サービスを利用したことで前職との関係が悪化し、業界内での評判に影響する可能性があります。
一方で、退職代行サービスを利用することで、精神的なストレスを軽減し、次の仕事探しに集中できるというメリットもあります。
退職代行を使ってスムーズに退職できた事例
Aさんは、小売店で事務員として働いていましたが、サービス残業が横行していました。そのうえ、高圧的な上司が多く、体力的にも精神的にも疲弊したAさんは、ついに退職を決意し、アディーレにご相談いただきました。
弁護士がお話を伺うと、Aさんが心配されていたのは、「ワンマン社長が退職を認めないかもしれない」という点でした。
しかし、ご依頼を受けた弁護士が交渉を行うと、会社側は特に問題なく退職を認めました。
そのうえ、弁護士が交渉した結果、残っていた有給休暇の消化や、退職金やボーナスの支給も滞りなく行われました。
退職後には、未払いとなっていた残業代の請求も行いましたが、裁判などになることもなく、無事に合意に至っています。
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事例の内容はご相談当時の状況や条件等によります。
退職代行の利用をお考えならアディーレへ
退職代行サービスは、退職に伴うストレスや負担を大幅に軽減し、安心して退職できる有効な手段です。
特に、上司との対話が怖いという場合や退職の意思を伝えても会社が取り合ってくれない場合に役立ちます。
法律上、退職は原則として労働者が自由に申し入れることができますが、実際には一人で退職を実現するのが難しい場面も少なくありません。自分で退職の話をするのがつらいと思ったら、退職代行サービスの利用を検討してみましょう。新しいキャリアへの扉を開く第一歩になるかもしれません。
ただし、その際は、信頼できる退職代行サービスを選ぶことが重要です。
退職に関する不安や疑問がある方は、労働問題に精通した弁護士が在籍するアディーレ法律事務所への無料相談をおすすめします。
経験豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた適切なアドバイスを提供いたします。
監修者情報
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資格
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弁護士、応用情報技術者、基本情報技術者
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所属
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東京弁護士会
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出身大学
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東京大学法学部、東京大学法科大学院
裁判に関するニュースに寄せられた、SNS上のコメントなどを見るにつけ、法律家が法的な思考をもとに下した判断と、多くの社会一般の方々が抱く考えとのギャップを痛感させられます。残念でならないのは、このようなギャップを「一般人の無知」と一笑に付すだけで、根本的な啓発もなく放置したり、それを利用していたずらに危機感を煽ったりするだけの法律家が未だにいることです。法の専門家として、専門知を独占するのではなく、広く一般の方々が気軽に相談し、納得して、法的解決手段を手に取ることができるよう、全力でサポートいたします。