労働トラブルコラム

私立教員なら残業代をもらえる!労働時間と残業代の計算方法を弁護士が解説

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私立学校の教員は、公立学校の教員と異なり、残業時間に応じた残業代の支払いを受けることができますが、その認識がない方もいらっしゃいます。
また、「放課後の部活動は労働時間として扱われるの?」、「残業代の計算はどうするの?」などの疑問によって、学校に対する残業代の請求を検討しないままにしている方もいるでしょう。
本コラムを読むことで、私立学校の教員には、学校に対して残業代を請求する権利があることを知り、勤務時間外の労働が労働時間に該当するのか、どのように残業代を計算するのかを理解できます。
ぜひ最後までご覧ください。

今回の記事でわかること
  • 私立学校の教員は、残業時間に応じた残業代の支払いを受けることができる
  • 勤務時間外の部活動の立会いなども労働時間とされる可能性がある
  • 残業代の具体的な金額を算出する方法
  • 残業代請求でよくある質問と回答
目次
  1. 「教員は残業代が出ない」というのは本当?
    1. 公立教員の場合「残業代」という名目の支給がない
    2. 私立教員の場合は会社員と同じように残業代をもらえる
  2. 教員の場合、どこまでが労働時間?
    1. 法的な観点から見た労働時間とは?
    2. 労働時間といえる例
      1. 所定の勤務時間外の放課後や土曜・日曜の部活動の立会いについて
      2. 昼休みに生徒や保護者と相談する場合について
    3. 実労働時間の計算
  3. 教員が残業代を計算する方法は?
    1. 賃金割増率
      1. 法内残業について
    2. 割増賃金の支払いが必要とされる場合の残業代の計算方法
      1. 基礎賃金
      2. 1時間あたりの基礎賃金
  4. 私立教員の具体的な残業代の計算方法
    1. 教員が所定の勤務日に放課後の部活動の立会いを18:30まで行ったとき
    2. 法定外休日に9時から18時まで部活動に立ち会い、休憩を1時間取得したとき
    3. 法定休日に9時から18時まで部活動に立ち会い、休憩を1時間取得したとき
  5. 残業代についてよくある質問
    1. 私立教員の場合、残業代は誰に請求すればいいですか?
    2. 残業代を請求するタイミングはいつがいいですか?
    3. これまでの残業代は支払ってもらえますか?
  6. 残業代の請求はアディーレの弁護士にお任せください!
  7. まとめ

「教員は残業代が出ない」というのは本当?

「教員は残業代が出ない」と言われることもあります。しかし、これは公立学校の教員にいえることであり、私立学校の教員には当てはまりません。
そのため私立学校の教員が残業すれば、残業時間に応じた残業代の支払いを受けることができます。
もっとも、私立教員のあなたが、「残業した」と主張しても学校側が「その時間は労働時間ではない」と残業代の支払いを拒否することがあります。
以下では、同じ教員なのに、私立教員は残業時間に応じた残業代をもらえて、公立の教員はもらえない理由をご説明していきます。

公立教員の場合「残業代」という名目の支給がない

公立の教員は、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「特給法」といいます)により、時間外勤務手当および休日勤務手当は支給されないとされています(特給法第3条2項)。
その代わりに、給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されると定められています(特給法第3条1項)。
公立の教員は、この特給法の規定により、時間外労働等の残業をしたとしても、教職調整額の支給があるのみで、実際の時間外労働の残業時間に応じた残業代は支給されません。
時間外勤務手当等の支給がない代償措置として、給料月額の4%に相当する教職調整額を支給するとされたのは、文部省が1966年に実施した教員勤務状況調査に基づくものであり、その当時は、給料月額の4%であれば足りると判断されたためです。
しかし、現在の教員の勤務状況からすると、給料月額の4%では不十分ではないかと考えられています。

私立教員の場合は会社員と同じように残業代をもらえる

特給法は、公立学校の教員に適用されるのであり、私立学校の教員には適用されません。
私立学校の教員は、学校法人から雇用された労働者であり、1日8時間、週40時間の法定労働時間(労働基準法第32条)を超えて働けば、実際の残業時間に応じた残業代として割増賃金の支給を受けることができます(労働基準法第37条1項)。
私立学校側が教員から残業代の請求を受け、「公立の教員には時間外勤務手当等の残業代が支給されないのであるから、同じ教員である君たちにも残業代は支給されない」と反論したとしても、その反論にまったく根拠はありません。
私立学校の教員は、残業時間に応じた残業代の支払いがされていないのであれば、学校に対し、その支払いを請求する権利があるのです。

教員の場合、どこまでが労働時間?

教員は、授業の担当や準備のみならず、学校行事の開催やその準備、生徒指導、部活動の顧問などさまざまな業務を行っており、所定の勤務時間の範囲だけでそれらをこなしていくことはできません。
教員としては、それらを行った時間のすべてが労働時間であることを前提として、私立学校に残業代を請求するものといえます。
しかしながら、私立学校側から「所定の勤務時間以降の部活動の立会いは、教員個人による自発的行為であり、労働時間ではない」などと言ってくることがあります。
そこで、教員の場合、法的に見てどのような時間が労働時間に当てはまるのか、例を交えてご説明します。

法的な観点から見た労働時間とは?

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
指揮命令下に置かれているか否かは、客観的に定まるものであり、雇用契約、就業規則等の定めのいかんにより決定されるものではないとされます(三菱重工長崎造船所事件最高裁判決・最一小判平成12年3月9日参照)。
このように、労働時間に該当するかどうかは、使用者の指揮命令下にあるのか客観的に判断されます。
そのため、使用者から明示の指示がなかったとしても、黙示の指示によるものであれば、労働時間に該当するとされることになります。

労働時間といえる例

所定の勤務時間外に行う部活動の立会いや、所定休憩時間である昼休みに生徒やその保護者と相談することについて、詳しく見ていきましょう。

所定の勤務時間外の放課後や土・日の部活動の立会いについて

部活動は学校教育の一環として行われており、学校が運営管理しているのが通常です。
そのため、部活動の顧問と割り当てられた教員が、部活動に立ち会うことは、学校の業務の遂行そのものといえます。
そして、学校が勤務時間外にも部活動に立ち会うよう明示の指示をしていないとしても、教員が勤務時間外に部活動の立会いをしていることを知りつつ、これに異議を述べていないのであれば、学校の黙示の指示によるものといえます。
そのため、部活動の時間も学校の指揮命令下にある労働時間に該当するといえます。

昼休みに生徒や保護者と相談する場合について

所定休憩時間である昼休みに生徒や保護者と相談することは、生徒の学校生活上の問題の解決、学習意欲の向上、進路指導などの目的で行われるのであれば、学校業務の遂行そのものといえます。
そして、学校がお昼休みに相談をするよう明示の指示をしていなかったとしても、教員が昼休みに生徒や保護者と相談していることを知りつつ、これに異議を述べていないのであれば、学校の黙示の指示によるものといえ、その時間も学校の指揮命令下にある労働時間に該当するといえます。

実労働時間の計算

所定の勤務時間外の放課後や土曜・日曜の部活動の立会いなどが労働時間に該当するとなると、所定の勤務時間に加え、立会いなどに必要とされた時間を加えたものから、休憩時間を引いたものが、その日の実労働時間とされます。
もし昼休みに生徒や保護者と相談し、その日にまったく休憩を取得することができなかったのであれば、休憩時間を控除することなく、その日の実労働時間が計算されることになります。

教員が残業代を計算する方法は?

教員が残業代を計算する方法について、具体的な例も踏まえて詳しく見ていきましょう。

賃金割増率

労働基準法第37条では割増賃金について、以下のように定めています。

労働の種類 賃金割増率
時間外労働(1日8時間または週40時間を超えて働いた分) +25%以上
休日労働(法定休日に働いた分) +35%以上
深夜労働(午後10時から午前5時までに働いた分) +25%以上
時間外労働+深夜労働 +50%以上
休日労働+深夜労働 +60%以上

以下では、残業には当てはまるものの、割増賃金が適用されない法内残業について触れていきます。

法内残業について

法内残業とは、残業を含めても1日の法定労働時間である8時間を超えないことです。

たとえば、図のように所定勤務時間が1日6時間とされ、実労働時間が8時間であったときには、2時間分の残業代が発生します。
このケースでは実労働時間が1日の法定労働時間である8時間を超えていないため(法内残業)、学校は教員に対し、割増分を上乗せした残業代を支払う必要はありません。
残業代の具体的な金額は、1時間あたりの基礎賃金×残業時間数となります。基礎賃金についてはのちほど解説していきます。

割増賃金の支払いが必要とされる場合の残業代の計算方法

たとえば、所定の勤務時間が1日8時間とされており、実労働時間がこれを超えれば、必然的に1日の法定労働時間も超えることになります。
この場合、学校は教員に対し、残業代として、割増分を上乗せした割増賃金を支払う必要があります。
この割増賃金は、次の式で計算されます。

1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間数

  • 残業時間数は、法定労働時間を超えて働いた時間数、深夜労働の時間数、休日労働の時間数を指します。

基礎賃金

基礎賃金とは、通常の労働時間・労働日に行った場合に支払われる賃金のことです。
つまり、割増賃金が発生することのない所定の勤務時間だけ働いたときに、その対価として支給されるものです。
そのため、割増賃金はこれに該当せず、以下のものは労働基準法第37条5項および労働基準法施行規則第21条によって除外するとされます。

  • 個人の事情に基づき支払われている賃金(家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当など)
    • 個人的事情を考慮することなく、一律に同額が支給されている場合は、控除されません。
  • 臨時に支払われた賃金(結婚や出産に対する手当、病気見舞金など)
  • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
    • 名目は賞与とされているものの、毎月の基本給の金額を抑えるべく、その一部を、夏と冬の2回に分けてまとめて支給したものであれば、除外されることにはなりません。

1時間あたりの基礎賃金

1時間あたりの基礎賃金とは、基礎賃金を時給換算したものです。
その計算方法は、年俸制や歩合給制など、賃金制によって異なりますが、今回は教員に多い月給制の場合を見ていきます。

1時間あたりの基礎賃金=月給の基礎賃金÷1ヵ月の平均所定労働時間

また、1ヵ月の平均所定労働時間は、以下の式で算出します。

使用者が定めた年間の総労働日×1日の所定労働時間÷12ヵ月

たとえば、使用者が定めた年間総労働日が240日、1日の所定労働時間が8時間であれば、上の式に当てはめることで、1ヵ月の平均所定労働時間が160時間と算出できます。

私立教員の具体的な残業代の計算方法

次のような条件における計算例を見ていきます。

  • 月給制の賃金の1時間あたりの基礎賃金が2,000円
  • 所定の勤務日が月曜日から金曜日の週5日
  • 所定の勤務時間が7:30~15:30でお昼休憩1時間(7時間)
  • お昼休憩以外に休憩を取得することがない

また例として所定の勤務時間外の部活動の立会いを挙げますが、その時間が労働時間に該当することも前提としております。

教員が所定の勤務日に放課後の部活動の立会いを18:30まで行ったとき

私立教員の具体的な残業代の計算方法

まず、15:30を超えて働いているため残業代が発生します。しかし16:30までは1日の法定労働時間である8時間を超えていないため、法内残業となり、残業代は以下の計算式で算出されます。

2,000円×1時間=2,000円

16:30から18:30までは、時間外労働に従事したことになるため、以下の計算で残業代を算出します。

2,000円×1.25×2時間=5,000円

合計してこの日の残業代は、2,000円と5,000円の合計で7,000円となります。

法定外休日に9時から18時まで部活動に立ち会い、休憩を1時間取得したとき

週40時間を超えた以降は時間外労働となり、残業代として割増賃金が発生します。

月曜日から金曜日までの所定勤務日に欠勤がないことを前提として、以下の図の場合を考えます。

上記の場合、月曜日から金曜日までの所定の勤務時間の合計が35時間となります。
そして、土曜日の立会い時間を加えて週40時間を超えた以降は時間外労働となり、残業代として割増賃金が発生します。

法定外休日の労働は、法定休日労働にはなりませんが、週40時間の法定労働時間を超える場合、時間外労働に従事したことになります。

これに対し、土曜日の立会いの時間のうち週40時間までの5時間については、週の法定労働時間を超えないため、時間外労働にはならないものの、所定の勤務日以外に勤務した法内残業として、割増分の上乗せのない残業代が発生します。
表における土曜日の残業代の計算は次のようになります。

法内残業の残業代:2,000円×5時間=1万円
時間外労働の残業代:2,000円×1.25×3時間=7,500円

以上のことから、この日の残業代は、1万円と7,500円の合計である1万7,500円となります。

法定休日に9時から18時まで部活動に立ち会い、休憩を1時間取得したとき

法定休日労働の割増率に、時間外労働の割増率を重複させての計算は行われません。

月曜日~金曜日までの所定勤務日に欠勤がなく、土曜日は休みを取れたことを前提として、以下の図の場合を考えます。

日曜日は法定休日であり、法定休日労働となるため、この日の残業代は、次のような計算で算出できます。

2,000円×1.35×8時間=2万1,600円

なお、法定休日労働の割増率に、時間外労働の割増率を重複させての計算は行われません。
そのため先ほど紹介した例とは異なり、月曜日から起算して週40時間を超えても割増率は60%とならず、35%となります。

法定休日労働などの計算ができず、上記のような厳密な計算はできませんが、おおよその残業代の計算は可能ですので、こちらを使用され参考にしてください。

残業代についてよくあるご質問

労働時間のことや、残業代の計算方法は理解したものの、いざ残業代を請求するにあたり、ご質問をいただくことがあります。
以下では、よくあるご質問にお答えいたします。

私立教員の場合、残業代は誰に請求すればいいですか?

教員は、私立学校を運営する学校法人と雇用契約を締結しているのが通常ですので、学校を運営する学校法人に対し、残業代を請求することになります。
残業代の支払いを求める書面等の送付先は、私立学校を運営する学校法人となります。

残業代を請求するタイミングはいつがいいですか?

一般に労働者は、会社との関係を気にかけ、在籍中に残業代を請求することに消極的であるため、退職してから請求するケースが非常に多いです。
あなたも学校との関係を気にかけ、在籍中の請求にためらいがあるということなら、退職してから請求するのがよいといえます。
しかし、退職したいとの気持ちがあるものの、いつ退職するのか目処が立っていないと、退職するまでに残業代請求が時効で消滅する可能性があります。
残業代請求は、労働基準法の法改正により、2020年4月1日以降に支払日が到来したものは3年で時効消滅するとされます(労働基準法第115条、労働基準法附則第143条3項)。
退職するまでの間に時効消滅することを回避したいお気持ちが強ければ、在籍中であっても、学校に対し、残業代請求をするべきです。
教員の労働組合が結成されており、学校側に対して忖度なく権利主張しているのであれば、在籍中に残業代を請求して、仮に学校から不当な扱いを受けた場合でも、組合に相談すれば、組合から学校に対し、抗議してもらい、その撤回を求めてもらえるでしょう。
この点も確認して、在籍中に残業代を請求するのかお決めになるのもよいでしょう。

これまでの残業代は支払ってもらえますか?

協議交渉や裁判手続などで学校が支払いに応じる場合には、請求金額全額ではない可能性が高いですが、これまでの少なくとも過去2年分の残業代が回収できます。
なお、訴訟にて残業代請求を認容する判決を得たからといって、学校側が自動的に残業代を支払ってくれるとは限りません。
学校側が残業代の支払いを拒み続ける場合は、残業代の回収のため、強制執行手続をとることになります。

残業代の請求はアディーレの弁護士にお任せください!

学校から残業代の支払いがない、残業時間に応じた支払いがないと思われるなら、残業代の請求を検討されるべきです。
ただ、教員も学校の業務を遂行するのに多忙であり、残業代の計算をするだけでも大変な作業となり、その作業だけで膨大な時間がかかる可能性があります。
また、労働時間に該当するのかの判断や、基礎賃金となるのかの判断については、法的な知識が必要であり、教員の方がご自身で必ずしも的確に判断できるものではありません。
残業代の請求をお考えの場合は、労働問題のみを扱う部署があり、残業代請求の実績のあるアディーレ法律事務所にご相談ください。
土日も相談でき、相談は無料です。ご依頼後は、弁護士に残業代の計算から学校側との交渉まですべて弁護士が対応いたしますので、ご安心ください。
時効によって、請求できる残業代が減ってしまう可能性もあるので、迷っているなら早めにご相談ください!

まとめ

私立学校の教員は、公立の学校の教員と異なり、所定の勤務時間を超えて残業すれば、残業時間に応じた残業代の支払いを受けることができます。
残業代が未払いではないかと思われるなら、残業代請求は3年で時効により消滅してしまうため、まずは弁護士に相談しましょう。見込みがありそうな場合は、弁護士に依頼して学校に請求をかけていきます!
アディーレは土日の相談もでき、相談料は0円なので、まずはお気軽にご連絡ください。

  • 現在アディーレでは、残業代請求を含む労働トラブルと、退職代行のみご相談・ご依頼をお引き受けしております。 残業代請求と退職代行に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。

監修者情報

髙野 文幸
弁護士

髙野 文幸

たかの ふみゆき
資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
中央大学法学部

弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。

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