労働トラブルコラム

「退職は3ヵ月前に申し出ること」という就業規則。絶対に守らなきゃダメ?

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会社の就業規則で、「退職は3ヵ月前に申し出ること」などと決められている場合があります。しかし、「本当に3ヵ月前に退職を申し出ないと退職できないの?」、「3ヵ月以内の申し出は無効になるの?」という疑問をお持ちの方もいるでしょう。また、「退職までの3ヵ月間、上司から嫌がらせを受けないか心配」という不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、会社の就業規則に「退職は3ヵ月前に申し出ること」などの規定がある場合、どうすればすぐに退職できるのかについて解説いたします。

今回の記事でわかること
  • 就業規則に退職規定があっても原則申し出から2週間で退職できる
  • 退職するまでの間に上司や会社から嫌がらせを受けたときの対処法
  • 退職代行を利用すれば残業代請求や有給消化などの交渉も弁護士に任せられる
目次
  1. 「退職は3ヵ月前に申し出ること」という就業規則に従うべき?
    1. 退職の申し出から原則2週間で退職できるケース
    2. 就業規則のとおり「3ヵ月前」に退職を申し出なければならないケース
  2. 退職に関するよくあるトラブル例と対処法
    1. なかなか退職を認めてくれない
    2. 退職するまでの間に嫌がらせをされる
    3. 最終給与や残業代を支払ってくれない
    4. 有給を消化させてくれない
  3. スムーズに退職するためのポイント
    1. 口頭で伝えるのではなく退職届を提出する
    2. 有給を消化したい場合は退職を申し出る時に一緒に伝える
    3. 退職代行サービスを利用する
  4. 弁護士事務所の退職代行サービスを利用するメリット
    1. 精神的な負担を軽減できる
    2. 残業代の請求や有給の消化など退職に関する交渉も任せられる
  5. まとめ

「退職は3ヵ月前に申し出ること」という就業規則に従うべき?

就業規則に「退職は3ヵ月前に申し出ること」と書いてあっても、2週間で退職できるケースや、反対に就業規則のとおり3ヵ月前に申告しなければならないケースがあります。では、それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

退職の申し出から原則2週間で退職できるケース

期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)については、民法第627条1項で、「雇用の期間を定めなかったときは、労働者は、いつでも解約の申し出をすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」と規定されています。

この規定は、一般的に「退職は3ヵ月前に申し出ること」とする就業規則よりも効力が強く、優先されると考えられています。つまり、たとえ就業規則に「退職は3ヵ月前に申し出ること」と書かれていても、民法第627条1項が優先されるということです。そのため、無期雇用契約の場合、退職の申し出から2週間経過すれば、会社の同意がなくても一方的に退職できます。

就業規則のとおり「3ヵ月前」に退職を申し出なければならないケース

期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)については、無期雇用契約とは異なります。有期雇用契約の場合、期間満了まで労働者は退職できないのが原則です。つまり、就業規則に「退職は3ヵ月前に申し出ること」と書かれていれば、この規則は有効なのです。

ただし、以下のような場合には、有期雇用契約であってもただちに退職することが可能です。

  • やむを得ない事由がある場合(民法第628条)
  • 雇用契約書などであらかじめ示された労働条件が事実と相違する場合(労働基準法第15条2項)
  • 契約期間が1年を超えるものであり、かつ契約の初日から1年を経過している場合(労働基準法附則第137条)

もっとも、本来、有期雇用契約は期間満了まで退職できないのが原則ですが、就業規則で「退職は3ヵ月前に申し出ること」と定められていれば、3ヵ月前に退職を申し出ることで期間満了前に退職できます。また、この場合、たとえやむを得ない事由(民法第628条)などがなくても、3ヵ月で退職できるのです。そのような観点では、労働者にとって有利な就業規則であるともいえます。

退職に関するよくあるトラブル例と対処法

次に、退職に関するよくあるトラブル例と、その対処方法についてご説明します。

なかなか退職を認めてくれない

無期雇用契約において、以下のように会社がなかなか退職を認めてくれない場合があります。

  • 退職届を受理しない
  • 退職の申し出から2週間経過しても業務を命じるなどして事実上退職を認めない
  • 離職票や退職証明書を発行しない

しかし、会社が退職を認めなかったとしても、民法第627条1項では「退職の申入れから2週間経過すれば雇用関係が終了する」と定められています。そのため、会社に対して退職を申し出た以上、2週間経過すれば、法律上は雇用契約が終了し退職できるのです。それなのに、いつまでも会社が退職を認めず、離職票や退職証明書を発行しないのは許されません。
離職票などを発行してもらえない場合、労働基準監督署やハローワークへの相談や、弁護士に退職代行を依頼するのがよいでしょう。そうすることで、会社に退職を認めさせ、離職票などを発行してもらえます。

退職するまでの間に嫌がらせをされる

退職を申し出てから退職日までの間に、以下のような嫌がらせを受けることがあるかもしれません。

  • 普段は命じられない雑用をさせられる
  • 上司や同僚から無視される
  • 仕事を与えてもらえない

このとき、有給休暇が残っている場合は、有給休暇を使い出勤せずに退職するのがよいでしょう。有給休暇が残っていない場合、会社からのひどい嫌がらせで出勤できない状況であれば、退職日まで「出勤しない」という選択肢もあります。無視などをされる状況では、あなたが出勤する業務上の必要性は低く、会社に損害が発生する可能性も低いと考えられます。つまり、出勤せずとも、後日、損害賠償を請求される可能性は低いのです。無期雇用契約であれば、出勤せずとも、退職を申し出たあと2週間経過すれば、原則自動的に退職となります。

最終給与や残業代を支払ってくれない

会社が「退職する人には、給料や残業代を支払わない」と言ってくることがあります。ですが、給料や残業代を支払わないことは許されません。
労働基準法第23条1項では、「使用者は、労働者の退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」と定められています。
つまり、会社には、従業員から求められれば、退職後7日以内に給料を支払う義務があるのです。これに反すれば、会社は30万円以下の罰金が処せられる可能性があります(同法第120条1号)。
会社に「退職する人には、給料や残業代を支払わない」と言われたら、ただちに労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

有給を消化させてくれない

自身で退職を申し出たとき、会社が「退職するなら有給休暇は認めない」と言って、有給を消化させず、有給の分の賃金を支払ってくれないことがあります。
しかし、有給は、6ヵ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には法律上当然に付与されるものです(労働基準法第39条)。退職するからといって、この権利を行使できなくなることはありません。労働基準法第39条5項は、有給休暇を「労働者の請求する時季に与えなければならない。」と定めており、これに反する就業規則は無効です。
確かに、会社には時季変更権がありますが、時季変更権の行使には、「ほかの時季にこれ(年休)を与えること」が前提となります。ですが、退職の申し出と同時に有給休暇の取得を希望する労働者は、退職するのですから、「ほかの時季に有給を与えること」はできません。したがって、会社が「退職するなら有給休暇は認めない」というのは許されないのです。

スムーズに退職するためのポイント

スムーズに退職するために注意すべきポイントが3つありますので、ご紹介いたします。

口頭で伝えるのではなく退職届を提出する

退職の意思表示は、口頭だけではなく書面で行ったほうがよいといえます。なぜなら、無期雇用契約では、退職の申し出から2週間経過すれば退職の効果が発生しますので,いつ退職の申し出をしたのかが重要であるためです。

退職の意思を示すのによく使われる書面といえば、「退職届」と「退職願」ですが、この2つには法律上の明確な定義はありません。一般的には、退職届には、「一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職致します」などと記載し、一方的な退職(辞職)の意思表示に相当する文言を記載することが多いです。また、退職願には、「一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」などと記載し、会社の合意を得て退職するための文言を記載することが多いです。

特に無期雇用契約は、退職を申し出てから2週間経過すれば退職できるため、明確に「退職します」という文言を記載して提出すべきです。つまり、「退職届」を提出するのが無難といえます。

有給を消化したい場合は退職を申し出る時に一緒に伝える

有給を消化したい場合、退職を申し出るのと同時に伝えるのがよいでしょう。退職時に、残っている有給をすべて消化したいと思うのは、労働者として当然です。法律上も、残っている有給をすべて消化して退職することが許されます。したがって、会社は、従業員から有給消化の希望があれば、基本的にはそれに応じる義務があります。
退職の申し出をしてしばらく経ってからだと「有給消化させてほしい」とは言い出しにくくなるでしょうし、会社が有給消化を拒否してくるおそれがあります。ですから、有給消化については、退職を申し出るのと同時に伝えるのがスムーズです。

退職代行サービスを利用する

自分では退職を言い出しづらい場合、退職代行サービスを利用する方法もあります。弁護士に退職代行を依頼すれば、会社の上司などと直接話さずに、弁護士があなたの代理人として退職の手続をします。また、弁護士は、有給消化の申し出や、会社への最終給与の請求も行います。仮に、会社から理不尽な損害賠償請求をされた場合も、法律に基づいて的確に対応できますので、よりスムーズな退職を実現できる可能性が高くなります。

弁護士事務所の退職代行サービスを利用するメリット

退職代行においては、退職交渉のほか、さまざまな法的交渉が必要となることがあります。それをふまえ、民間の退職代行サービスではなく、弁護士事務所の退職代行サービスを利用するメリットについてご説明いたします。

精神的な負担を軽減できる

弁護士は、あなたの代理人として、会社に対し退職に関するあらゆる交渉ができます。弁護士に依頼することで、面倒な手続や交渉をすべて任せられるため、退職についての悩みや精神的な負担がかなり軽減されるでしょう。それにより、今後の転職活動などにも時間を使えるようになり、新たな一歩を踏み出しやすくなるのではないでしょうか。

残業代の請求や有給の消化など退職に関する交渉も任せられる

弁護士なら、退職代行とあわせて未払い残業代の請求もできます。長時間労働を強いられ、未払い残業代が発生していても、在職中に「残業代を支払ってほしい」と会社へ要求するのは難しいと思います。しかし、退職後に会社と関係がなくなってからであれば、未払い残業代の請求に踏み切りやすいのではないでしょうか。

また、弁護士なら、有給消化についての交渉も可能です。残っている有給を消化すれば、その分の給料も貰えるため、退職後の生活資金に充てることができます。退職時に有給が残っているのであれば、できるだけ有給を消化して退職するのがおすすめです。
そのほかにも、弁護士であれば、以下のようなあらゆる法的交渉が可能です。

  • 最終給与の請求
  • 退職金の請求
  • 損害賠償請求への対応

弁護士法により、「弁護士以外は、労働者の代理人として会社と法的交渉ができない」旨定められています。つまり、民間の退職代行サービスでは、このような法的な交渉はできないのです。そのため、退職代行は必ず弁護士に依頼するのがよいでしょう。

まとめ

期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)の従業員は、法律上、就業規則に「退職は3ヵ月前に申し出ること」と書いてあっても、退職を申し出てから2週間経過することで退職可能です。期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)であれば、この就業規則は有効ですが、場合によってはただちに退職することが可能です。

また、退職を申し入れた際に、会社が退職を拒否したり、有休消化を認めなかったりした場合、必ず労働基準監督署や弁護士に相談してください。

さらに、会社や上司との人間関係などが理由で、自身で退職を申し出ることが難しい場合には、弁護士に「退職代行」を依頼するのがよいでしょう。退職に関するやりとりを、すべて弁護士が代行してくれます。弁護士に依頼すれば、「退職できる」以外にも「残業代請求」や「有給消化」についても交渉してもらえるのです。

アディーレ法律事務所では、労働問題を担当する弁護士が退職代行をいたします。退職代行だけでなく、未払い残業代請求も可能です。退職代行や残業代請求をお考えの方は、ぜひ一度アディーレ法律事務所にご相談ください。

  • 現在アディーレでは、残業代請求を含む労働トラブルと、退職代行のみご相談・ご依頼をお引き受けしております。 残業代請求と退職代行に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。

監修者情報

重光 勇次
弁護士

重光 勇次

しげみつ ゆうじ
資格
弁護士,応用情報技術者,基本情報技術者,2級知的財産管理技能士,ビジネス著作権検定上級(AdvancedLevel)
所属
神奈川県弁護士会
出身大学
同志社大学法学部,同志社大学法科大学院

弁護士になってから,さまざまな方のご相談を受けてまいりました。その中で,「先生に話を聞いてもらって,とにかく気が楽になった」という方や,「心配に思っていた点が実はそんなに心配するようなことではないとわかって,安心した」という方がたくさんいらっしゃいました。不安に思われている点や悩みを解決したい方は,とにかく気軽に弁護士にご相談ください。あなたの立場にたって,親身にかつ真摯にお話をお聞きします。

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