労働トラブルコラム

なんで私が懲戒解雇!?会社から懲戒解雇されたらチェックすべきポイント

公開日:

会社側との感情のもつれやちょっとした誤解から、ある日突然、懲戒解雇を言い渡されるケースがあります。

懲戒解雇された状態を放っておくと、今後の生活において、さまざまなデメリットを受けてしまいます。会社が行った懲戒解雇が本当に有効かどうかは、きちんと調べてみなければわかりません。

懲戒解雇されたことに少しでも疑問を感じたら、以下のセルフチェックを行い、気軽に弁護士に相談しましょう。

今回の記事でわかること
  • 懲戒解雇されることのデメリット
  • 懲戒解雇が本当に有効かどうかセルフチェックするポイント
  • 会社に懲戒解雇の撤回を求める方法
目次
  1. 懲戒解雇とは?
    1. 懲戒解雇とは?
    2. いきなり懲戒解雇されたKさんのケース
    3. 懲戒解雇のデメリット
  2. その懲戒解雇、本当に適法?
    1. 一目でわかる!簡単セルフチェック
  3. 懲戒解雇に関するワンポイントQ&A
  4. 会社とどうやって戦う?
    1. パターン1 自分で会社と交渉する
    2. パターン2 弁護士に依頼して会社との対応を任せる
  5. まとめ

懲戒解雇とは?

懲戒解雇とは?

懲戒解雇とは、企業秩序違反に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇のことです。

いきなり懲戒解雇されたK子さんのケース

ルームシェアをしているK子とS美さんの会話を見てみましょう。

S美
あれ?K子!今日は、会社に行かなくていいの?それともリモートワーク?
K子
おはようS美。実は、さっき会社からこんなメールが届いたんだよね

「本日付で君を懲戒解雇した。もう会社に来なくてもいいよ」

S美
えっ!?懲戒解雇ですって?K子、何したの…!?
K子
思い当たるのは、体調不良でここ10日ほど会社を休んだことかな。課長にはちゃんと電話で、『有給休暇を充てておいてください』って伝えて、課長も『ああ、いいよ』って許可してくれたんだけどなあ…
S美
何かの行き違いで、無断欠勤扱いにされたんじゃない?それにしても、いきなり懲戒解雇なんてヒドいわ
K子
どうせ近いうちに会社辞めてやろうと思ってたし、社長とは、もともと馬が合わなかったんだ。争うのも面倒だから、このまま放っておくよ
S美
じゃあ、懲戒解雇を受け入れるつもり!?だって、体調不良で10日間休んだだけでしょ?それだけで懲戒解雇なんて、おかしくない?会社に撤回してもらいなさいよ。懲戒解雇には、多くのデメリットがあるのよ

懲戒解雇のデメリット

先ほどのK子さんのように、懲戒解雇も普通の解雇と同じで、大した違いはないだろうと思われる方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、懲戒解雇は、企業秩序違反に対する制裁罰として行われるものであり、以下のような大きなデメリットがあります。

  • 解雇予告手当を支払ってもらえないまま、即時解雇されることがある
  • 退職金の全部または一部が支払われない可能性がある
  • 失業保険が支給されるまでの期間が長くなる可能性がある
  • 転職活動に支障が出る可能性がある

このように、懲戒解雇には、金銭面、社会生活面、精神面で、さまざまなデメリットがあるのです。たとえば、いくら心の中で「自分は懲戒解雇されるような人間ではない!」という自負があったとしても、会社から言い渡された懲戒解雇をそのまま受け入れてしまえば、再就職の採用面接などで、前職を辞めた理由を聞かれないかと、ビクビクして臨まなければならないかもしれません。さらに、退職理由について「懲戒解雇されました」と答えれば、選考上不利に扱われるおそれもあります。

ですから、会社が一方的に懲戒解雇を言い渡してきた場合、K子さんのように面倒くさいからといって懲戒解雇を受け入れたり、放置したりするのはやめましょう。少しでもおかしな点があると感じるなら、ぜひ会社に懲戒解雇を撤回させるべく行動しましょう。

その懲戒解雇、本当に適法?

会社は、気に入らない従業員を自由に懲戒解雇できるわけではありません。したがって、会社から懲戒解雇されたからといって、それが本当に法律的に有効な懲戒解雇だとは限りません。そこで、まず、本当に自分の懲戒解雇が適法かどうかセルフチェックしてみましょう。

一目でわかる!簡単セルフチェック

就業規則で定めてあり、かつその就業規則が周知されているか?

会社が、労働者を懲戒解雇するためには、懲戒事由および懲戒の種類が、あらかじめ就業規則等に規定され(労基法第89条9号)、かつ、それが周知されていなければなりません。

言い換えれば、そもそも就業規則等を制定していないような会社は、懲戒解雇をすることができないのです。また、就業規則が制定されていたとしても、それがどこに備え付けられているのかわからず、労働者が必要なときに確認できないような場合もやはり、そのような就業規則に基づく懲戒解雇は認められません。

労働者の行為が、就業規則に定める懲戒事由に該当しているか?

会社が懲戒解雇をするには、労働者の行為が、就業規則等に規定された懲戒事由に該当していることが必要です。主な懲戒事由には、次のようなものがあります。

経歴詐称
最終学歴、職歴、犯罪歴などを偽ることをいいます。
職務懈怠
無断欠勤、遅刻過多、勤務成績不良などがこれにあたります。とはいえ、たとえば、たった一度の無断欠勤で懲戒解雇になるわけではありません。これらの職務懈怠が懲戒解雇事由となるのは、程度が顕著な場合のみです。
業務命令違反
上司の命令、残業命令、出張命令などに違反する行為がこれにあたります。
職場規律違反
暴行、パワハラ、セクハラ、窃盗、横領などがこれにあたります。金銭の横領などは、たとえ金額が低くても懲戒解雇が有効と認められやすく、一方、会社備品の持ち帰りなどについては、業務上極めて重要な物品を持ち帰るなど悪質性が顕著でない限り、懲戒解雇事由があったとまではいえません。
私生活上の非行
たとえば、休日に傷害事件を起こすなど、会社の業務とは無関係なところで労働者が刑事罰を受けたような場合です。私生活上の非行であっても、会社の社会的評価を著しく毀損するような場合は、懲戒解雇事由になりえます。

懲戒処分が相当かどうか?

就業規則に懲戒事由の定めがあり、懲戒事由に該当する行為があったとしても、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない(一般的な常識から逸脱しているような)場合は、その懲戒権を濫用したものとして、懲戒解雇は無効となります(労働契約法第15条)。

懲戒解雇は、労働者にデメリットが大きいため、労働者の行為の内容や性質、生じた結果、会社による事前の指導の有無、労働者の勤務歴や反省の有無、その他の情状をしんしゃくし、解雇とするには重すぎる場合は、懲戒解雇は無効となります。

弁明の機会があったか?

懲戒処分をする前に、あらかじめ労働者に弁明の機会を与えられていたかどうかは、一般の方が思っているよりも、ずっと重要な要素です。冒頭のK子さんの会社のように、ある日、いきなり会社から懲戒解雇を言い渡されたような場合は、弁明の機会が与えられていないため、そのような懲戒解雇は無効となる可能性が高くなります。

懲戒解雇に関するワンポイントQ&A

懲戒解雇されると、絶対に解雇予告手当はもらえないのですか?
いくら会社が「あなたは懲戒解雇だ!」と主張していても、重大な服務規律違反が認められない場合や、会社が行政官庁の認定を受けていない場合は、解雇予告手当を支給しなければなりません。
解雇予告手当の支払い等をせず即時に解雇するためには、「労働者の責めに帰すべき事由」(労基法第20条1項)が必要です。「労働者の責めに帰すべき事由」とは、「あなたを解雇する」という予告期間をおかずに、即時に解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な服務規律違反、または背信行為のことをいいます。また、即時解雇するには、使用者は、行政官庁の認定を受けなければなりません(労基法第20条3項、第19条2項)。
したがって、いくら会社が懲戒解雇だと主張していたとしても、重大な服務規律違反が認められない場合や、会社が行政官庁の認定を受けていない場合は、解雇予告手当を支給しなければなりません。
懲戒解雇されると、絶対に退職金がもらえないのですか?
懲戒解雇の場合に退職金の全部または一部を支払わないのであれば、これをあらかじめ退職金規程などに明記しておかなければなりません。そのため、退職金規程などに「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」と明記されていない場合は、退職金を支払ってもらえることがあります。
また、懲戒解雇にも程度の差がありますので、退職金をゼロまたは一部減額することができるのは、懲戒解雇のなかでも、勤続の功を抹消ないし減殺するほどの著しい背信行為があった場合に限られます。
再就職の採用面接では、前の会社を懲戒解雇されたことを必ず申告しなければいけませんか?
聞かれてもいないのに、自発的に懲戒解雇されたことを申告する必要はありません。
しかし、退職理由を聞かれた際に、虚偽の回答をすれば、それは経歴詐称にあたってしまいます。
会社からは、ただ「懲戒解雇だ!」と言われただけで、何が理由で懲戒解雇されたのかがわからないのですが、自分の解雇理由を知る方法はありますか?
解雇理由を知るには、会社に「解雇理由証明書」を発行してもらいましょう。会社には、労働者から請求されれば、解雇証明書を発行する義務があります(労基法第22条)。もし、請求しても発行してくれない場合は、労基署に申告し、労基署から会社に対して証明書を発行するよう指導してもらいましょう。

会社とどうやって戦う?

パターン1 自分で会社と交渉する

ひとえに懲戒解雇といっても、会社の金庫から多額の金品を横領したり、社長と馬が合わず嫌がらせ目的で懲戒解雇を言い渡されたりなど、解雇原因はさまざまです。

本来なら懲戒解雇にあたらないような些細な理由で、会社が懲戒解雇を言い渡してきたような場合でも、労働者と会社との間に感情のもつれが絡むようなケースでは、労働者個人から会社に対して、懲戒解雇の撤回を求めても、会社は応じてくれないことが多いのが実情です。また、会社から、それらしい解雇理由証明書などが届くと、「会社の主張が正しくて、自分は懲戒解雇されても仕方がなかったんだ…」と思い込んでしまう方もいらっしゃいます。

しかし、これまでご説明したとおり、会社から言い渡された懲戒解雇を受け入れる、または放置したままにしておくと、あとで大きなデメリットになって自分に返ってくることが、おわかりいただけたと思います。

そこで、もしご自身が、「自分は懲戒解雇されるような行為をした覚えはない!」と少しでもお思いになるのであれば、誇りと自信をもって会社に対して、懲戒解雇の撤回を求めるべきです。

パターン2 弁護士に依頼して会社との対応を任せる

パターン1のように、ご自身で会社と交渉して、懲戒解雇の撤回を求めようと思っても、うまく対応できる自信がないような場合は、ぜひ弁護士に対応を任せることをお考えください。

突然、懲戒解雇を言い渡してくるような会社に対しては、怒りや不安などもあるでしょうから、冷静な判断をしたり、ご自身だけで会社に懲戒解雇の撤回を求めたりすることは、至難です。交渉が進んでも、途中でらちが明かなくなれば、労働審判や訴訟といった裁判手続をとることも視野に入れなければなりません。法律や裁判手続について詳しくない場合、それらの請求をお一人で行うことは難しいです。

それなりに法律知識が必要ですし、複雑なやり取りが発生することも多いです。加えて、再就職についても考えていかなければなりません。これらの労力や時間を考えると、労働問題に詳しい弁護士に依頼して交渉を任せる方法をおすすめします。

弁護士に依頼すると、会社とのやり取りや資料の開示請求などを弁護士が代わりにやってくれますので、ご自身は、再就職活動などにお時間を充てることができます。仮に労働審判や訴訟に発展した場合でも、弁護士が対応します。

また、会社との交渉により、懲戒解雇が無効となった場合には、解雇されなかったら毎月得られたであろう賃金を会社に対して請求できます(「バックペイ」と言います)。さらに、未払い残業代があれば、バックペイと一緒に残業代も請求できることがあります。労働トラブルに詳しい弁護士であれば、懲戒解雇の撤回とバックペイ・残業代の支払いなども併せて会社に求めることができますので、この点もメリットです。

まとめ

ある日突然、会社から懲戒解雇を言い渡されたとき、少しでも自分が懲戒解雇を受けるのはおかしいと感じたなら、そのまま受け入れたり放置したりしないことが大事です。

自分が懲戒解雇を受けるのはおかしいのではないかという疑問をお持ちの場合や、会社に懲戒解雇の撤回を求めたいがどうしたらよいかわからないとお悩みの場合は、労働トラブルに精通している弁護士へご相談してみてはいかがでしょうか?
初回相談が無料の事務所もありますので、話を聞いてみるのも一つの手かと思います。

アディーレには、『損をさせない保証』というサービスがあります。懲戒解雇のご相談に加え、残業代請求を一緒にご依頼いただいた場合、回収できた未払い残業代の中から弁護士費用を頂戴するので、手出しが発生しません。もし、回収できた残業代が、弁護士費用に満たない額だったとしても、回収できた残業代を上回る弁護士費用はいただいておりませんので、ご安心ください。着手金は無料で、弁護士費用は回収できた残業代や解決金から精算いたしますので、ご依頼時に弁護士費用をご準備いただく必要はありません。

懲戒解雇のお悩みに加え、「残業代も支払われていないかも」と心当たりのある方がいらっしゃれば、まずは、アディーレへお問合せください。

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監修者情報

中田 祥二郎
弁護士

中田 祥二郎

なかだ しょうじろう
資格
弁護士、行政書士(有資格)、華語文能力試験高等(台湾)
所属
東京弁護士会
出身大学
早稲田大学第一文学部、台湾大学大学院法律研究所、早稲田大学大学院法務研究科

人が法律事務所の門を叩くときは、どんな時でしょうか。もちろん個人によってさまざまなご事情があるでしょうが、人生において何か一つ区切りをつけて新たな出発をしたいと強く願っている点では、共通していると思います。先行きの見えないこんな時代だからこそ、その出発が希望に満ちたものでありますように。そのお手伝いをさせていただくことこそが弁護士の役割だと思っております。

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