労働トラブルコラム

製造業で未払い残業代が発生しやすい理由は?会社の反論への対処法を解説

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自分の給料がどういう計算になっているのか、会社側からきちんとした説明を受けたことがないまま、長年働いているという人は意外にも多く、受け取れるはずの残業代をもらいそびれているかもしれません。本コラムでは、製造業にスポットを当て、業界の残業代事情や会社側のよくある反論について解説していきます。

今回の記事でわかること
  • 製造業で働く人の正しい労働時間とは?
  • 製造業によくある反論と弁護士の見解
  • 残業代請求を弁護士に依頼するメリット
目次
  1. 製造業も残業代はもらえることが原則
  2. 製造業の残業時間を求める方法は?
    1. 労働時間はどれくらい?
    2. 製造業の会社によくある反論
  3. 残業代の計算方法をチェック!
  4. 残業代は支払い済み?製造業にもありえる固定残業代制
  5. 製造業の残業代請求は自分でも可能?
  6. 【まとめ】製造業の残業代請求を弁護士に依頼するメリット

製造業も残業代はもらえることが原則

勇気を出して、会社に残業代の支払いについて確認したとしても、「そもそも始めから、残業代が出ない契約だよ」などと、会社側から当然のような顔で説明されてしまうケースもあるかもしれません。法律の知識がない人であれば、「会社の言っていることが正しくて、自分が間違っているのではないか」と不安に思ってしまうのではないでしょうか。

それでは、残業代に関して、法律ではどのように定められているのか、AさんとBさんの会話から見ていきましょう。

Bさん
「残業代は出ない契約だ」なんて、社長が言っていることが法律的にも正しいとは限らないんじゃない?
Aさん
あれだけはっきり断言してるのに…?それに、給料のことでうるさく言って、会社に迷惑かけるのは嫌だし…。
Bさん
残業代の請求は、会社に難癖をつけてお金をもらおうというものじゃなくて、“自分が働いた対価として、法律上当然にもらえるはずのお金を支払ってもらおう”というだけだよ。労働基準法第37条には、“1日8時間を超えて働いた場合や週40時間を超えて働いた場合は残業代がもらえる”としっかり書いてあるんだ。
Aさん
ええ、そうなの!?
Bさん
残業代は、支払われるのが原則。いくら会社から残業代は出ないと言われたからって、簡単に諦めないこと。残業代は請求できるものと思って、まずは一歩踏み出してみようよ。

Bさんが言うように、会社の主張を鵜呑みにし、残業代はもらえないとあきらめてしまうことはありません。また、会社にお金の話をしたくないなどと、恥ずかしがる必要もありません。会社から残業代を支払ってもらうのは労働者の当然の権利であり、請求できるのが原則だと思って、行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

製造業の残業時間を求める方法は?

労働時間はどれくらい?

では次に、残業代を計算する基礎となる、本当の労働時間はどれくらいになるのか考えてみます。2人のやり取りを参考に、一緒に計算してみましょう。

Aさん
タイムカードをもとに計算してみたら、やっぱり結構残業してる!朝8時から夕方6時まで、毎日10時間も働いていたみたい。
Bさん
労働時間の計算では、休憩時間を差し引くことになっているんだよ。
Aさん
そうなの?昼休みは本来1時間なんだけど、先月は工場長から、昼休みを30分で切り上げるように言われていたから…。
Bさん
それなら、出勤時刻から退勤時刻までの10時間から、昼休憩の30分を引いた9時間半が1日あたりの労働時間だね。そのうち、8時間を超えた部分が残業時間になるから、毎日1時間半残業していた計算になるね。
Aさん
じゃあ、この1ヵ月間で30時間以上は残業しているんじゃないかな。早速、残業代を支払ってもらえるよう、会社に交渉してみる!

Aさんのように正しい労働時間を計算し、残業代を請求したとしても、会社側が支払いに応じないケースは十分に考えられます。では、会社側は労働者であるAさんの請求に対して、どのような反論を行う可能性があるでしょうか。ここからは、残業代請求をした際に、製造業の会社からよく出される反論と、それに対する弁護士の見解をご紹介します。

製造業の会社によくある反論

「着替えや朝礼の時間は労働時間じゃないから、タイムカードから差し引かせてもらうよ」

そんなことはありません。作業服への着替え、朝礼や朝の体操等への参加が会社から業務上義務づけられているのであれば、立派な労働時間です。

「就業規則に休憩時間は1時間と書かれているから、30分しか休んでいなくても、1時間休憩したものとして扱うよ」

そんなことはありません。就業規則に書かれた時間が基準となるわけではなく、実際にどれだけ休憩できていたかが基準となるからです。

「就業規則に残業は禁止だと書かれているから、残業は認められないよ」

そんなことはありません。会社が、形式的に就業規則で残業を禁止していたとしても、労働者が日々残業を行っているのを知りながら黙認している場合や、残業しなければ処理しきれないような業務量があるような場合は、残業時間として認められます。

「作業を真面目にやっていれば、残業しなくても終わるはずだ」

これは、残業代を支払いたくない会社からよく出される反論です。労働者側は、自分の業務の内容(一旦機械を動かすと最低〇時間は持ち場を離れられなくなる等)、残業が必要となった事情(持ち場の同僚が一人辞めたのに欠員が補充されなかった等)、ほかの従業員の残業状況などを具体的に挙げつつ、自分がまじめに仕事をしていたことを主張・立証していくことになります。

「タイムカードがないから、あなたが本当に8時間以上働いていたのかわからない」

小さな町工場などでは、そもそもタイムカードが設置されていない会社もあります。これは、実は、労働者側にとても不利に働きます。残業代請求を行う場合、労働者側が残業時間の証明をしなければならないからです(立証責任といいます)。もし、訴訟や労働審判で、労働者が労働時間を立証できなければ、原則として、残業時間はなかったものとして扱われます。

ですから、タイムカードがない会社に在職中の方は、今すぐにでも、スマートフォンのアプリなどで、労働時間を毎日正確に記録しておいてください。会社側から、「自宅で打刻したかもしれない」と反論されるのを防ぐため、GPS機能付きのアプリを使うことをおすすめします。加えて、「打刻していない日は欠勤した日だ」と反論されないためにも、出勤日は必ず打刻しましょう。

残業代の計算方法をチェック!

続いて、先ほど計算した残業時間を使って、残業代を計算してみましょう。果たして、Aさんが本来もらうべき残業代はいくらになるのでしょうか?

Aさん
「給料明細によると、基本給17万円、技術手当5万円、食事手当5,000円、通勤手当5,000円…。先月の残業時間は33時間だったから、これに基本給の17万円から割り出した、残業1時間あたりの時間単価を掛けて、と…。
Bさん
残業代を計算する際の基礎となる賃金は、基本給だけじゃないよ。Aさんの場合なら、法律上除外賃金とされる通勤手当以外の、基本給、技術手当、食事手当を全部合計して、これを1ヵ月あたりの平均所定労働時間(本ケースでは173時間とする)で割って、残業1時間あたりの時間単価を計算するんだ。

Bさんの言うとおりに計算すると、Aさんの残業代は下記のようになります。

(17万円+5万円+5,000円)÷173(1ヵ月の平均所定労働時間)×1.25(労働基準法で定められた残業代の割増率)×残業33時間=約5万3,650円

また、残業代は過去3年分までさかのぼって請求することができます。仮にAさんが2023年4月以降までの3年間も同じように残業していたとすれば、約5万3,650円×36ヵ月=約193万1,400円が未払い残業代ということになるのです。

実際の法律事務所では、より正確な残業代を請求するために、専門のスタッフが、1日8時間超過分、週40時間超過分、休日出勤、深夜労働等を1分単位で計算していきます。そのため、法律事務所に頼んで計算してもらうと、自分が思っていたよりも多くの未払い残業代があったということも珍しくはないのです。

残業代は支払い済み?製造業にもありえる固定残業代制

これまで、1日8時間を超えて働いたら、残業代が出るのが原則と説明してきました。しかし、これには法律上、いくつかの重大な例外が存在しているのです。その代表例が、「〇〇手当を固定残業代として、すでに残業代を支払っている」というものです。固定残業代とは、残業代を、あらかじめ基本給や手当等のなかに含めて支給するものをいいます。

たとえば、Aさんの場合、技術手当として毎月5万円が支給されていましたが、「この技術手当の5万円が実は残業代だった」と主張する会社もあるのです。もし、この反論が通ってしまえば、たとえ残業をしたとしても、その残業代は技術手当によってすでに支払い済みとなるわけです。Aさんの1ヵ月の残業時間である約33時間が、あらかじめ会社に定められていた残業時間内に収まっていた場合、技術手当によって残業代は全額支払われていたことになり、当初請求しようとしていた残業代が一挙に“ゼロ”になってしまいます。このように、固定残業代の反論は、非常に強力な反論になりえるのです。

会社が固定残業代制を採用すること自体は違法ではなく、実際、多くの会社で採用されています。しかし、会社が固定残業代制を採用していたからといって、残業代請求を諦める必要はまだありません。法律専門家の目で精査すると、そもそも会社の固定残業代の規定が無効だった、なんてことも多いのです。たとえば、次にあげるような会社側の反論は無効といえるでしょう。

「入社時には説明しなかったけど、実は、技術手当は固定残業代として払っていたんだ」

会社と労働者との間で、固定残業代の合意を有効に成立させるためには、入社時に、会社が、「技術手当のなかに●時間分の固定残業代が含まれている」等の説明を、労働者に対して行っていなければなりません。労働者から残業代を請求されるときになって、「実は技術手当は固定残業代だった」といっても、有効に残業代を支払ったことにはならないのです。

「『技術手当は、特定の技能に応じて支払われる。技術手当には残業代を含むものとする』と賃金規程に書いてあるよ」

固定残業代の規定が有効であるためには、労働者が、自分のもらっている給料明細をみて、自分の残業代が正しく支給されているかどうかを判断できるようになっていなければなりません。しかし、この就業規則の場合、技術手当のなかに、技術に対する手当の部分と残業に対する手当の部分とが混在してしまっています。これでは、技術手当のうち、一体いくらが技術に対する手当で、いくらが残業に対する手当なのかがわからず、残業代がきちんと支払われているのか計算できません。このような固定残業代の規定は、「明確区分性の要件を欠く」として無効になります。

製造業の残業代請求は自分でも可能?

今や、インターネットで検索すれば、残業代を請求するためのフォーマットが見つかるような時代です。弁護士などに依頼するよりも、自分で計算した未払い残業代を請求書のフォーマットに記入し、内容証明郵便で会社に送るほうが、簡単でお金もかからないと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、残業代請求は、一件簡単に見えて、一般の方が行うにはかなり難しいものです。“言い訳上手”な会社側の反論にもめげずに、自分の権利を主張し続けなければなりません。法律の知識や残業代請求の経験がないなか、一人で行うには、あまりにも負担が大きすぎます。そして悪いことに、残業代請求をしないでいると、残業代請求権が毎月少しずつ消滅時効で消えていってしまうのです。気がついた頃には、何十万円分の残業代請求権が時効消滅していた、という話も珍しくありません。

【まとめ】製造業の残業代請求を弁護士に依頼するメリット

そこで、みなさんにご提案したいのが、気軽に相談できる法律事務所に、まず電話してみること。「自分の残業代がどれくらいありそうか」、「会社側の主張は本当に正しいのか」など、不安に感じている点を解消してみてはいかがでしょうか。

アディーレには、労働事件に精通した弁護士が在籍しており、依頼者の方、一人一人のご事情に合ったアドバイスを行い、皆さんが本来受け取るべき残業代を取り戻します。
「毎日残業をしているのに、いまいち給料が安いのはなんでだろう」と疑問に感じている皆さん。着手金なし&成功報酬制のアディーレ法律事務所へ、まずは相談してみませんか?

  • 現在アディーレでは、残業代請求を含む労働トラブルと、退職代行のみご相談・ご依頼をお引き受けしております。 残業代請求と退職代行に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。

監修者情報

中田 祥二郎
弁護士

中田 祥二郎

なかだ しょうじろう
資格
弁護士、行政書士(有資格)、華語文能力試験高等(台湾)
所属
東京弁護士会
出身大学
早稲田大学第一文学部、台湾大学大学院法律研究所、早稲田大学大学院法務研究科

人が法律事務所の門を叩くときは、どんな時でしょうか。もちろん個人によってさまざまなご事情があるでしょうが、人生において何か一つ区切りをつけて新たな出発をしたいと強く願っている点では、共通していると思います。先行きの見えないこんな時代だからこそ、その出発が希望に満ちたものでありますように。そのお手伝いをさせていただくことこそが弁護士の役割だと思っております。

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