給料・賃金の未払い

給料が消えてしまう?請求しにくいと思って,黙っていませんか?
~未払い給料を請求するには~

Iさん

Iさんのケース

私は,今の会社に勤めて10年になりますが,たまに給料が支払われないことがあるんです。といっても,まったく支払われないわけではなくて,半分だけ支払われたり,何回かに分けて支払われたり…。最初は,経営状況が悪いので仕方ないのかなと思って我慢していましたが,そんな状態がもう5年も続いています。

現在は月給30万円で契約していますが,ある月は給料が10万円なんていうこともありました。今までの分を合わせると,かなりの未払いがあるんじゃないかと思っています。こういう場合,未払い分の給料は請求できないんでしょうか?

確かにそのような状況ですと請求しづらいですね。しかし,Iさんが黙っていたせいで,かなりの未払い給料がなくなってしまっています。実は,給料を請求できる権利には時効があり,一定期間経つと請求できなくなってしまうのです。

1.給与支払いの5原則

給与支払いの5原則

今回のケースでは,本来支払われるべき給料が支払われなかったり,額が減って支払われたりしています。このようなケースでは,会社に対して請求しづらいことから,やむを得ず見て見ぬフリをしてしまう方も少なくないようです。当事務所にご相談に来られた方の中には,「辞めるときに請求しようと思っていた…」と考えていた方もいらっしゃいます。

しかし,そのような考え方は大きな間違いであり,とても危険なものなのです。
そもそも,給料というのは生計の基本となる大事なものですから,法律上,多くの決まりごとが定められています。それは,つぎの5つです。

  • (1)通貨払いの原則
  • (2)直接払いの原則
  • (3)全額払いの原則
  • (4)毎月1回以上払い
  • (5)一定期日払いの原則

この5つの原則が組み合わされることによって,毎月一定額の給料が必ず受け取れるような仕組みになっているのです。

ですから,そもそも給料が支払われたり支払われなかったりすることは,これらの原則に違反することになってしまいます。しかし,労働者にとって,Iさんのような状態を放置していることは,もっと恐ろしいことになってしまう危険性があるのです。

2.給料の請求権の時効

労働基準法では,給料(賃金)に関する請求権は,2年間の時効にかかると定められています。どうして2年という短い期間なのか不思議に思う方もいらっしゃるかもしれませんが,民法では1年間で時効消滅するとされているところを2年に延ばしたものであって,給料については特別に保護した結果なのです。また,退職金については,その金額が大きいことや,会社を辞めているため請求が簡単にできない等の理由から,5年間の消滅時効が定められています。

このように,給料を請求する権利というのは,2年間それを行使しないでいると,権利が消滅してしまうのです。このことは,残業代についても同様です。
残念ながら,2年以上前の残業代や給料を請求することはできません。ですから,働いた分の給料が支払われないということのないように,しっかりと会社に対して請求していくことが大切です。

3.今回のケースでは

とはいえ,理屈としてはわかっていても,実際に会社に対して未払い分の給料を請求するのは気が引けるという方も少なくありません。今後も勤め続けていく会社ですから,関係を悪化させたくないという気持ちもよくわかります。

ただし,消滅時効の制度には,進んでいる時間をリセットすることができる「中断」という手続があります。「今すぐに支払え!」と請求しないまでも,後で会社に開き直られることがないように,未払い給料があることを認めさせたり,一筆書いてもらうといった対応も必要だと思われます(難しい法律用語で,これを「債務の承認」と呼びます)。

ただし,会社との関係が良好であり,いずれ絶対に支払うと言われているような場合には,あえて会社と波風を立たせる必要はありませんから,そのまま信じて待つことが効果的な場合もあり得ます。

今回のケースでは,Iさんは時効の中断手続を行っていなかったことから,過去の給料の請求分はあきらめていましたが,弁護士を間に入れて交渉したところ,会社側が時効による消滅を主張せずに,全額支払ってもらうことができました。

4.給料が未払いになっていたら,弁護士に相談を!

会社からの給料が未払いになっていたり,減額されてしまっていた場合には,ひとりで悩まずに法律と交渉の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

未払い給料の請求は,退職時であれば特に躊躇する必要はありませんが,そのまま現在の勤務先で働き続ける場合には,会社との関係や自身が置かれている状況によって,最適な解決方法が変わることもあります。

どうすればよいのかわからない場合には,ぜひ弁護士にご相談ください。誰かに相談するだけで気持ちが軽くなりますし,労働条件や就業規則などを検討し,今後の対応についてアドバイスを受けることもできます。

いくら経営が厳しいといっても,あなたが一生懸命働いたお金です。2年間という期限を忘れることなく,最適な方法でしっかり請求しましょう!

弁護士 篠田 恵里香

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