パワーハラスメント

その行為にレッドカード!それはパワハラです!!
~悔し涙では終わらせない~

Wさん

Wさんのケース

私は,不動産会社に営業担当として勤務している会社員です。最近,会社が大手の同業他社に買収され,職場に新たな上司であるGさんがやってきました。当初はGさんとも上手くやれていたのですが,仕事の進め方を巡って意見が対立してから状況が一変しました。

Gさんは,私に聞こえるように「なんであいつがこの部署にいるんだ。みんなが迷惑している」,「どこへ飛ばされようと仕事ができない奴だと言いふらす」「あいつは給料泥棒だ」などと繰り返し言うようになりました。

私は,自分ひとりが我慢をすれば,同じ部署のみんなに迷惑をかけることはないと考えて,ずっと我慢をしてきましたが,最近は出社するのが辛く,職場のことを考えるだけでめまいや吐き気などにおそわれるなど,体調を崩しがちです。

Gさんの行為は,パワハラにあたると思うのですが,何とかできないのでしょうか?

Wさんのケースは,典型的なパワハラ(パワーハラスメント)であるといえます。このままでは,いまの職場でWさんが実力を発揮することはできませんし,何より体調が心配です。早急に対応策を講じる必要があります。

1.パワハラとは

パワハラとは

パワハラとは,「パワーハラスメント」の略語であり,近年登場した和製英語です。法律上では明確に規定されていませんが,一般的には職場内での地位や権限を利用したいじめをさします。少し難しくいうと,パワハラとは,職権などの権力を背景にして,本来の業務の範囲を超えて,継続的に人権と尊厳を侵害する言動を行い,就業者の働く環境を悪化させ,あるいは雇用不安を与えることをいいます。

会社においては,業務を円滑に行うため,管理職には各種の権限が与えられています。そして,ときには必要に応じて部下らに対して指導を行うことが認められ,また会社から求められてもいます。そこで,パワハラと業務指導の境目が難しい問題となるのです。

たとえば,仕事の予定をすっぽかしてしまった部下に対して,上司が「何をやっているんだ!」と怒鳴った場合,適切な行為とはいえませんが,それだけでパワハラということはできません。なぜなら,業務上の指導の範囲内での叱責は,認められているからです。

しかし,指導の範囲内を超えて,たとえば「お前とはもう仕事をしたくない」,「もう家にでも帰って寝てろ」等の言葉を使い,それが日常的に繰り返される場合はパワハラ行為となります。

つまり,叱責のみであれば業務指導の範囲内となり正当な業務行為となりますが,その叱責に嫌がらせの意図が含まれている場合には,パワハラにあたるのです。

パワハラか否かを判断する際に重要となるのは,上司等の行為が,「本来の業務を超えて」「継続的に」弱い立場の者に対して行われ,「働く環境を悪化」させたり,受け手に「雇用不安」をもたらすものかどうかという点です。この点からすると,過度な業務の遂行を部下に命じ,達成できなかった場合に叱責することは,パワハラとされる可能性が高いといえます。

2.今回のケースでは

今回のWさんのケースでは,Gさんの行為は業務上の指導の範囲内とは到底いえず,パワハラにあたります。Wさんがパワハラを受けていることは明らかなのですから,それを我慢することは,自分にとっても,会社にとってもよくありません。このまま放置しておけば,職場環境はますます悪化し,会社全体の利益を下げることにもなりかねません。

では,Wさんは誰に,どのようなことを請求できるのでしょうか。まず,実際にパワハラを行っていたGさんにパワハラを止めさせることが先決です。そのうえで,パワハラに対する慰謝料はもちろん,病院等に通っていた場合には,その治療費などを請求することができます。また,会社には,労働者にとって快適で働きやすい職場環境をつくる義務があります。そのため,この義務に違反したことを理由に,会社に対しても慰謝料を請求したり,このような人物を雇っていることの責任を追及することもできます。

もっとも,パワハラを理由として,WさんがGさんや会社に慰謝料等を請求していくにあたっては,難しい点があります。それは,「法律上許されないもの」としてパワハラが認められるかどうかという点です。上述したように,上司からの叱責がパワハラにあたるか否かについての判断は,微妙なところがあるのが実情です。それでも,パワハラにあたるかどうかについては,一般的な裁判所の基準があります。

裁判所の判断基準では,他人に対して,心理的な負荷を過度に蓄積させる行為は,原則として違法であり,パワハラにあたるとされています。しかし,それが合理的な理由に基づいて,一般的に妥当な方法と程度で行われた場合には,正当な職務行為としてパワハラにはあたらないとしているのです。

したがって,暴力が伴うものは,先ほどの基準に照らし,基本的には法律上許されず,パワハラにあたると考えられます。また,暴力が伴わなくとも,ほかの従業員がいる前で繰り返し「バカ」と罵倒するなどの行為は,本来の業務範囲を超え,継続的かつ執拗に人格を傷つけるため,法律上許されないといえます。

3.パワハラで悩んでいるのでしたら,弁護士に相談を!

パワハラでお悩みの方は,すぐに法律と交渉の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

誰かに相談するだけでも気持ちが軽くなりますし,パワハラが認められれば,その行為を止めさせることで会社の職場環境を改善させることができます。さらに,慰謝料や治療費を請求することも可能です。

パワハラは,職場での上下関係を悪用し,相手を一方的に追い詰める悪質な行為です。しかし,その行為がパワハラにあたるかどうかは判断が難しく,当事者だけで解決することは困難です。安心して働ける職場を手に入れるためにも,ひとりで悩まず,弁護士にご相談ください。

弁護士 篠田 恵里香

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