残業代の未払い(時間外労働等)

その残業手当は,本当に大丈夫ですか? 
~割増賃金は正しく請求しましょう~

Tさん

Tさんのケース

私は,月給21万円と毎月の残業手当5万円で働いているOLです。いまの会社に入社してからもう5年になるのですが,2年目あたりから仕事が忙しくなり,残業時間が増えました。深夜まで残業したりすることもありますし,休日の無い,週7日勤務もあるくらいです。2年目から残業手当がつくようになり,最初は嬉しかったのですが,最近ではあまりの残業の多さに心身ともに,疲れ切ってしまっています。

でも,会社からは毎月定額の残業手当がきちんと支払われていますから,これ以上会社に請求することってできませんよね…。

あきらめるのは,まだ早いです。Tさんの場合,残業手当を超えた残業代が発生している可能性が高いです。ですので,法律の定める計算方法で算出して,残業手当では足りない分を,会社に請求することができます!

1.残業代が発生する仕組み

残業代が発生する仕組み

今回のケースでは,Tさんは「残業手当」という名目で会社から賃金が支給されていることから,「これ以上の請求はできないのではないか?」と,考えています。では,本当にそうなのでしょうか。まずは,残業代が発生する仕組みから考えていきたいと思います。

残業代は,定められた勤務時間(所定労働時間)を超える労働を行ったときに発生します。定められた勤務時間とは,会社との契約で決められるものです。
たとえば,9時から18時まで(休憩時間は1時間)勤務することが労働契約の内容として定められている人が,8時から19時まで仕事をしたとすると,2時間分の残業代が発生していることになります。

ところが,残業代とは,これだけで終わりではないのです。どのようなことかといいますと,労働基準法では,労働時間は1日8時間まで,1週間で40時間までと定められていて,この定めに違反して残業させた場合は,所定の割増賃金を支払わなければならないとされているのです。

そうすると,先ほどの例では1日10時間労働しているわけですから,会社は残業代として,通常の賃金より割増された賃金を支払わなければならないのです。実際に,どのくらいに割増されるのかという点については,後ほど詳しく説明したいと思います。

2.残業代の請求と残業代手当

Tさんが誤解する原因となってしまった残業手当とは,法的にどのような意味をもつのでしょうか。

営業職のように,外回りをして会社に戻ってから事務作業をするなど,残業(時間外労働)をすることがある程度想定される職種においては,「残業手当」や「営業手当」等,名目の違いこそあれ,残業代に代わる固定制の手当が設けられていることがあります。

この手当は,残業代の代わりに支払われるものです。ですから,残業代の代わりに支払われる手当は,法的にみれば,その限度で残業代の支払がなされたことになるという意味を持っています。

実際に発生した残業代の額にかかわらず,必ず会社が支払うものと思っていただくとわかりやすいかもしれません。そして,実際の残業代が手当の金額を上回る場合には,会社はその差額分を労働者に対して支払う義務があります。このように,会社からみれば,労働者の残業時間にかかわらず必ず支払わなければならない最低金額が,残業手当ということになります。

もっとも,残業手当を設けることは,会社にとって,個人間で差のある残業代に関する計算の手間を省略できるとともに,残業代計算の基本となる給与を引き下げることができるというメリットがあります。残業代の具体的な計算方法については,つぎの項目で詳しく述べますが,残業手当は,あくまで残業代に充てるため支払われるものですので,基本給とは異なり,残業代計算の基本とは,ならないのです。

3.残業代の計算方法

では,残業代がいくら発生しているのかについては,どのように計算すればよいのでしょうか。基本的な考え方としては,時給に換算し,時間数と割増率を掛けていくという方法になります。

  • ※割増率とは
    法律で定められた時間を超える労働をした場合,その分だけ通常の賃金より割増した賃金を支払わなければなりません。これが,「割増率」です。法律で定められた時間を超える場合のほか,深夜に労働した場合や休日に労働した場合にも,割増賃金を支払わなければなりません。具体的な割増率は,次のようになっています。
種類 割増率
時間外労働 25%以上
休日労働 35%以上
深夜労働 25%以上
時間外・深夜労働 50%以上(25%+25%)
休日・深夜労働 60%以上(35%+25%)

注意)休日は,もともと労働時間の概念がないので,時間外労働とは併存しません。

Tさんの場合,月給が21万円ということですから,たとえば,ある月の所定の労働時間が160時間であるとすると,時給1250円ということになります。仮に,その月に全部で200時間働いたとすると,時間外の労働時間は40時間ということになりますから,1250円×40時間×1.25=62500円をその月の残業代として請求することができます。ただし,すでに残業手当として5万円が支払われていますから,実際に請求できる金額は,12500円となります。

1日あたり2時間の残業でも1ヵ月間でおおよそこのくらいの請求ができ,それが1年分ともなれば15万円にもなります。Tさんの場合,深夜まで残業することもあり,休日にまで出勤していたとのことですから,1日2時間の残業時間では収まらないと思いますし,深夜,休日割増手当による金額の増加もあるでしょうから,実際に請求することができる金額は,1年間分で100万円は下らないのではないかと考えられます。

4.残業代の請求方法

では,その金額を実際に請求していくためには,どのような手続をとればよいのでしょうか。まずは,会社に内容証明郵便を送付するなどして,任意で交渉することが考えられます。ここで会社側が支払ってくれると話が早いのですが,金額も安くはないため,すぐに首を縦に振る会社は多くはないようです。

つぎに,任意に支払ってもらえないとなると,「労働審判」という手続を裁判所へ申し立てることになります。厳密にいうと,ほかにも法的な手段はあるのですが,当事務所では,労働問題についてスピーディーかつ簡単な手続での解決が期待できることから,労働審判をおすすめしています。

労働審判では,しばしば,残業したことの証明が難しいことがあります。サービス残業は,まさにその典型例です。もし万が一,労働審判でも話がつかず,審判の結果に納得がいかない場合には,訴訟へ移行することになります。ただし,訴訟に移行すると,時間がかかる手続ですので,長い場合で1年を超えることもあります。しかも,ほとんどのケースでは,訴訟での結論は労働審判での結論と変わることはありません。

5.今回のケースでは

今回のケースでは,Tさんは当初,残業代の請求をあきらめていました。ところが,きちんとした証拠に基づいて残業代を計算したところ,何と200万円を超える金額を手にすることができました。新聞やニュースで報道されていますとおり,請求できないと思っていたのに,いざ計算してみたところ,多額の残業代が発生していたというケースは,皆さんが思っている以上に多いようです。

6.1日8時間または週に40時間を超えて働いていたら,弁護士に相談を!

このように,残業手当や営業手当など名目上の諸手当に,働いた分の残業代がきちんと含まれているのかは計算してみなければわかりません。そのような場合には,法律と交渉の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。きっと相談するだけでも気持ちが軽くなりますし,残業代の具体的な計算や請求についてのアドバイスもしてもらえるでしょう。1日8時間または週に40時間を超えて働いている方でしたら,ぜひ,弁護士に相談してください。本当の意味での適切な残業代を請求することができます。

弁護士 篠田 恵里香

残業代請求のことなら 何度でもご相談無料

0120-610-241

  • 残業代請求のご相談なら,何度でも無料です!
  • 法律相談実績35万人のアディーレだからできる,安心サポート!
  • 会社に対して,何らかの請求や主張をするお考えがない場合,ご相談をお受けしておりません。あらかじめご了承ください。